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「フローラとファウナ 動植物誌の東西交流」展 駒込 東洋文庫ミュージアム
駒込・千石
chariot

駒込の東洋文庫ミュージアムでは「フローラとファウナ 動植物誌の東西交流」展が
開かれています。
会期は5月14日(日)までです。

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フローラ(flora)はラテン語で、ある地域と時間の中の植物全体、ファウナ(fauna)は
動物全体を表します。

2023年はドイツ人医師で博物学者のシーボルト(1796-1866)がオランダ商館医として
来日して200年にあたります。
シーボルトは日本の動植物の数多くの標本や書物を持ち帰って、著作にまとめています。
展覧会では東洋文庫の所蔵する動植物の貴重な図鑑、図譜類を展示しています。

「博物誌」 プリニウス 77年成立(1950年、パリ刊行)
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自然界の歴史を網羅した、史上初の百科全書的な大著です。

「神農本草経」 1-2世紀頃成立か 作者未詳 1854年刊
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中国最古とされる薬学書で、薬用になる動植物、鉱物について記述しています。

「本草和名」 深根輔仁編 918年頃成立 1796年刊
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平安時代の医博士、深根輔仁が中国の本草書に書かれた薬物の和名、
日本での産地などをまとめています。

「三才図会」 王圻(おうき) 万暦37年(1609)刊
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王圻(1530 - 1615)は明時代の学者で、天文地理や動植物について図入りで
説明した図鑑を制作しています。
三才は天・地・人つまり万物のことです。
内容は不完全なところがあり、右ページのカブトガニ(鱟)は図が不正確です。

「和漢三才図会」 寺島良安 正徳5年(1715)刊
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大坂の医師、寺島良安(1654 - ?)が「三才図会」に日本の動植物を加えた図会で、
日本で観察できるものについては実地調査し、約30年かけて完成させています。
カブトガニ(鱟)の図も正確になっています。

「セイロン植物誌」 リンネ 1748年 アムステルダム刊
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スウェーデンの博物学者カール・フォン・リンネ(1707-1778)はリンネ式階層分離体系を
考案し、「分類学の父」と呼ばれています。

「茶の国、中国への旅」 ロバート・フォーチュン 1852年 ロンドン刊
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ロバート・フォーチュン(1812-1880)はスコットランドの博物学者で、中国に派遣され、
茶の樹と茶の栽培技術をインドに持ち込んで、茶の製造を行なっています。
幕末の日本を訪れたこともあります。

「家畜と栽培植物の変異」 チャールズ・ダーウィン 1868年 ロンドン刊
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チャールズ・ダーウィン(1809-1882)が動物の家畜化と栽培植物、遺伝について
進化論に基いて解説した研究書です。
あらゆる家畜化された鳩の原型をカワラバトだとしています。

「物類品隲(ぶつるいひんしつ)」 平賀国倫(源内)編 宝暦13年(1763)
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平賀源内(1728-1780)が本草学者の田村藍水(1718-1776)と共に、当時開かれた
物産会の展示品のうち、360種類を選んで産地などを解説した、一種の展示品目録です。
朝鮮人参や甘蔗の栽培方法も書かれていて、輸入品だった朝鮮人参や砂糖の
国産化を促す意図もあったようです。

「蒹葭堂雑録」 木村蒹葭堂著 暁鐘成編 1859年刊
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木村蒹葭堂(きむらけんかどう、1736-1802)は大坂の文人で、博識と膨大な
コレクションで知られ、広い交友関係を持っていました。
訪れた文化人は、青木木米、伊藤若冲、上田秋成、浦上玉堂、大田南畝、
田能村竹田、円山応挙、最上徳内、本居宣長、与謝蕪村、頼山陽など
極めて多彩です。

「廻国奇観」 エンゲルベルト・ケンペル 1712年 レムゴー刊
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エンゲルベルト・ケンペル(1651-1716)はドイツ出身の医師、博物学者で、
長期の世界旅行の途中にオランダ船で長崎の出島に来航しています。
帰国後にペルシャや日本など、滞在した国の見聞をまとめています。
絶滅したとヨーロッパで考えられていたイチョウが日本にあることを発見もしています。

「日本植物誌」 カール・ツンベルク 1784年
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カール・ツンベルク(1743-1828)はスウェーデンの博物学者で、リンネに師事しています。
出島のオランダ商館医として日本に滞在し、リンネの分類法と命名法によって
日本の植物をヨーロッパに紹介しています。

「NIPPON」 シーボルト 1832-35年 ライデン刊
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シーボルト(1796-1866)はドイツ人医師で、1823年にオランダ商館医として
来日し、塾の開設を許可され、多くの塾生に西洋医学を教授しています。
日本研究の集大成となる書で、開いてあるのは茶についてのページです。

「日本植物誌」 シーボルト 1835-70年 ライデン
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日本の植物学者たちの協力で収集した植物標本を元に、約150点の挿絵とともに
生育地や名称、利用法などが詳細に書かれ、約35年かけて制作されています。 

「菩多尼訶経」 宇田川榕菴 1834年
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宇田川榕菴(1798-1846)は蘭学者で、西洋の化学や植物学などを日本に
紹介しています。
酸素、温度、細胞など数多くの用語は宇田川榕菴の造語です。
西洋植物学の入門書で、リンネの植物分類を紹介しています。
菩多尼訶はラテン語のbotanicaのことで、お経と同じく如是我聞の句で始まる
経文の形式を採っています。
西洋の学問への反発を考慮した、涙ぐましい工夫です。

「草花写生図」 増山正賢 文化8年(1811)
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増山正賢(1754-1819)は伊勢長島藩第5代藩主で、文人大名として知られています。
本草学を好み、絵は木村蒹葭堂に学んで、動植物を細密に写生しています。

「本草図譜」 岩崎灌園 文政11年(1828)完成
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岩崎灌園(1786-1842)は徒士の幕臣で、本草学者です。
従来の本草書に描かれた図が不完全だったり、欠落していることに不満を持ち、
20年かけて自ら2000種の植物を描いた図譜を制作しています。
日本で最初の植物図鑑とされています。

「桜華八十図」 作者、制作年不明
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江戸を中心にした各地の桜80種を集めた写生図集です。
日本では11の野生種を交配させて多くの品種を生んでいます。

「花壇朝顔通」 壷天堂主人著 森春渓画 文化12年(1815)
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奈良時代に遣唐使によって薬草として持ち帰られた朝顔は江戸時代後期には
栽培ブームが起こっています。
180種ほどの朝顔を集めた日本最初の朝顔図鑑です。

古代以来、動植物への知識が深まり、正確になっていく様子がよく分かる展示です。

展覧会のHPです。

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【2023/04/20 19:01】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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