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「ルーヴル美術館展 愛を描く」 国立新美術館
乃木坂
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六本木の国立新美術館では「ルーヴル美術館展 愛を描く」が開かれています。
会期は6月12日(月)まで、火曜日は休館日です。

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ルーヴル美術館の所蔵する、ギリシア・ローマ神話や聖書、世俗生活の中の
愛について描いた70点を超える作品の展示です。

フランソワ・ブーシェ 「アモルの標的」 1758年
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会場の最初に置かれています。
ローマ神話のアモル(キューピッド)たちが心臓に矢の当たった的を掲げて、
真実の愛の誕生を祝福しています。
勝利の象徴の月桂冠を掲げるアモル、不要になった矢を燃やすアモルもいます。
的には外れた矢の跡もあって、愛の困難さも示しています。
縦268㎝の大作で、見上げるような画面はきわめて繊細優美で華やか、
色彩に透明感があり、この展覧会で一番気に入った作品です。
フランソワ・ブーシェ(1703-1770)はロココを代表する画家で、ルイ15世や
愛妾ポンパドゥール夫人に寵愛されています。
ブーシェの作品は3点、展示されています。

アントワーヌ・ヴァトー 「ニンフとサテュロス」 1715-16年頃
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ニンフはギリシャ神話の妖精で、森などに住み、若い女性の姿をしています。
サテュロスもギリシャ神話の妖精で、半人半獣の姿をした、悪戯者です。
眠っているニンフの白い肌と、覗き見するサテュロスの褐色の肌が対照的です。
ジャン=アントワーヌ・ヴァトー(1684-1721)はロココ時代の画家で、
庭園での優雅な宴などの様子を描く雅宴画(フェート・ギャラント)という
ジャンルを始めています。
ロココを代表する画家の一人ですが、36歳で亡くなっています。

ドメニキーノ 「リナルドとアルミーダ」 1621年
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叙事詩「解放されたエルサレム」の一場面で、十字軍の王子のリナルドと
魔女のアルミーダが恋に陥っています。
水辺で、剣を置いたリナルドは、アルミーダを見上げながら鏡を差し出し、
アルミーダは鏡に映る自分を見つめています。
アモルが愛の弓で狙い、左上には二人を見付けた兵士も見えます。
ドメニキーノ(1581-1641)は本名ドメニコ・ザンピエーリ、イタリアのバロックの画家で、
アンニーバレ・カラッチの弟子です。
バロックらしい右上から左下に流れる画面構成で、師のカラッチの描いた作品に
倣っていますが、より風景を大きく描いています。

(参考)
「リナルドとアルミーダ」 アンニーバレ・カラッチ 1601~02年 カポディモンテ美術館蔵
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フランソワ・ブーシェ 「プシュケとアモルの結婚」 1744年
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類まれな美貌のプシュケに美の女神ヴィーナスは嫉妬しますが、息子のアモルは
誤って愛の矢を自分に刺してしまい、プシュケに恋をします。
さまざまな試練の後、二人が結婚する場面で、神々が祝福しようと集まりますが、
ヴィーナスだけは腹を立てて反対側を向いています。
神々の集う晴れやかな祝典の場で、プシュケとアモルは明るく輝いています。

ウスタシュ・ル・シュウール
 「母に叱られ、ケレスの腕のなかへ逃げるアモル」 1645年頃

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アモルはヴィーナスの子でとされていますが、何事があったのか叱られてしまいました。
ケレスはローマ神話の豊穣神、地母神です。
ウスタシュ・ル・シュウール(1617-1655)はフランスの画家で、パリで活動しました。

サッソフェラート 「眠る幼子イエス」 1640-1685年頃
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眠る幼子イエスを聖母マリアが優しく抱き、翼を付けた頭のプトーがそれを見ています。
サッソフェラート(1609-1685)は本名をジョヴァンニ・バッティスタ・サルヴィといい、
イタリアのサッソフェラート出身です。
ルーベンスやベラスケスと同じバロック時代の画家ですが、静けさに満ちた、
彫刻のような作品を描いています。

サミュエル・ファン・ホーホストラーテン 「部屋履き」 1655-1662年頃
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サミュエル・ファン・ホーホストラーテン(1627-1678)はオランダの画家で、
レンブラントの弟子にもなっています。
オランダ風俗画の一つですが、人物は描かれていません。
室内空間の見え方に関心を持った面白い作品で、後のモンドリアンや
デンマークのヴィルヘルム・ハマスホイ(1864–1916)の先駆を思わせます。

フランドルの風俗画はダフィット・テニールス(子)、ハブリエル・メツー、
ヘラルト・テル・ボルフなどの作品があります。

ジャン=オノレ・フラゴナール 「かんぬき」 1777-1778年頃
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男女が絡み合い、男はドアのかんぬきに手を延ばしている、ただならぬ
雰囲気の情景です。
かんぬきにスポットライトを当てた、光のドラマになっています。
ジャン=オノレ・フラゴナール(1732-1806)はロココを代表する画家の一人で、
「ぶらんこ」が特に有名ですが、フランス革命でロココ様式が廃れると、
不遇のうちに亡くなったそうです。

フランソワ・ブーシェ 「褐色の髪のオダリスク」 1745年
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イスラムの後宮の女奴隷を題材にした、オリエンタリズム(東方趣味)による作品です。
モデルは13歳年下の妻ということで、真っ白い肌をこれ見よがしにさらけ出して
笑みを浮かべています。
広げられた青い布地がとても明るく鮮やかで、モデルの姿を引き立て、
刺激的な絵柄でありながら優雅な雰囲気です。

最後の展示室は撮影可能で、新古典主義とロマン派の作品が展示されています。

フランソワ・ジェラール  「アモルとプシュケ」または
「アモルの最初のキスを受けるプシュケ」 1798年

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アモルとプシュケの愛を描いていますが、ロココ時代と違って、落着いて静かな画面です。
フランソワ・ジェラール(1770 – 1837)はフランスの新古典主義の画家で、
ジャック=ルイ・ダヴィッドに師事しています。

クロード=マリー・デュビュッフ 「アポロンとキュパリッソス」
 1821年 アヴィニョン、カルヴェ美術館蔵

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キュパリッソスはギリシャ神話に登場する美少年で、ある時、可愛がっていた
雄鹿を殺してしまいました。
悲嘆にくれるキュパリッソスをアポロンが支えているところです。
クロード=マリー・デュビュッフ(1790-1864)はフランスの画家で、
ジャック=ルイ・ダヴィッドに師事しています。

アリ・シェフェール 「ダンテとウェルギリウスの前に現れた
フランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊」 1855年

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ダンテ(1265-1321)の叙事詩、「神曲」地獄篇の一場面で、ダンテと同時代に
起こった事件を題材にしています。
リミニの名門の娘、フランチェスカは夫の弟パオロと恋仲になったことが露見し、
二人とも夫に殺されてしまいます。
地獄に堕ちた二人を地獄巡りをしているダンテと古代ローマの詩人、
ウェルギリウスが見ているところです。
地獄と妄執を描いていながら、どこか冷たい印象があり、その作風は
「冷たい古典主義」と呼ばれています。
アリ・シェフェール(1795-1858)はフランスで活躍した新古典主義の画家で、
文学を題材にした作品や宗教画、肖像画などを多く手掛けています。

ウジェーヌ・ドラクロワ 「アビドスの花嫁」 1852-1853年
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小品で、バイロンの詩に基いた、トルコの王子と王女の悲恋の物語を描いています。
剣を振り上げて戦おうとする男を女が押し留めています。
ドラクロワはダヴィッドやアングルの新古典主義に対抗するロマン主義の代表者で、
強い色彩や劇的な動きが特徴です。
新古典主義のジェラールとの違いがはっきり分かります。

テオドール・シャセリオー
 「ヘロとレアンドロス 」または「詩人とセイレーン」 19世紀第2四半期

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ギリシャ神話のお話で、へレスポントス(現ダーダネルス海峡)の岸辺に住んでいた
アンドロスは対岸の塔に住んでいたヘロに恋をして、毎晩塔の明かりを頼りにして
海峡を渡っていましたが、ある晩嵐のためにランプの灯が消え、アンドロスは方向を
見失って溺死し、嘆き悲しんだヘロは塔から身を投げてしまいます。
テオドール・シャセリオー(1819-1856)はフランスの画家で、11歳で新古典主義の画家、
アングルに入門し、将来を期待されますが、やがて新古典主義と対立するロマン主義に
傾倒します。
この作品でもレアンドロスの絶望を劇的に描き出しています。

バロック、ロココ、新古典主義、ロマン派、オランダ風俗画など、各時代各派の描き振りの
違いも分かって、見応えのある展覧会です。

展覧会のHPです。

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【2023/03/07 18:28】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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