fc2ブログ
「小林古径と速水御舟―画壇を揺るがした二人の天才―」展 山種美術館 その2
恵比寿
chariot

山種美術館で開かれている特別展、小林古径生誕140年記念「小林古径と速水御舟
―画壇を揺るがした二人の天才―」の2回目、今回は速水御舟です。
会期は7月17日(月・祝)までです。

速水御舟(1894-1935)は浅草生まれで、少年の頃から絵の才能を認められ、
松本楓湖(1840 – 1923)の画塾に入門しています。
後に日本美術院の同人になっていますが、先輩の小林古径より早く、
40歳で亡くなっています。

速水御舟 「錦木」 大正2年(1913) 山種美術館
速水img950 (3)

初期の作品で、能などで知られる、秋田の錦木伝説を題材にしています。
若者が求婚の印である錦木(5種の木の枝)を恋する人の家の門に立てているところです。

  錦木はたてなからこそ朽にけれけふの細布むねあはしとや  能因法師

速水御舟 「桃花」 大正12年(1923) 山種美術館
速水img950 (4)

長女の初節句のために描かれた作品です。
宋時代の院体画風の描き方で、落款も痩金体という、徽宗の作り出した
細くて硬い書体になっています。

速水御舟 「春昼」 大正13年(1924) 山種美術館
速水img950 (5)

埼玉県片山村(現・新座市)に住んだ頃の作品です。
農家の廂に拵えた鳩の巣に鳩が集まり、あわあわとした春の日の風情に満ちています。

速水御舟 「百舌巣」 大正14年(1925) 山種美術館
御舟002

速水御舟の住んでいた目黒には野鳥が多く、邸内にもモズが巣を作っていました。
モズの巣と雛を描いていて、滲みやぼかしを使って巣の質感を上手く表しています。
宋画の雰囲気があり、緊張感と一種の凄味を感じます。

速水御舟 「炎舞」 大正14年(1925) 山種美術館 重要文化財
速10-9-2009_004

速水img957 (2)

照明を暗くした第2室に展示されています。
夜の焚き火に集まる蛾の群れです。
やがて炎に焼かれてしまう蛾の舞う、一瞬の時を捉えています。
揺らぎながら燃える炎は仏画の不動の火炎に倣っていますが、暗い背景との
境はぼかされています。
煙が渦を巻いて昇り、集まった蛾は円を描いて飛び、円の中心を飛ぶ蛾は
小さく、周りの蛾は大きく描かれています。
立体感と動きのある画面です。
御舟は、背景の色について、「もう一度描けといわれても二度とは出せない色」と
述べているそうです。

「昆虫二題 葉蔭魔手・粧蛾舞戯」 大正 15年(1926) 山種美術館
山種img778 (3)

山種img778 (2)

「炎舞」の翌年の作品で、「葉蔭魔手」は蜘蛛の巣が放射状に広がり、「粧蛾舞戯」は
蛾の群れが光の渦に向かって収斂しています。
速水御舟は以後、このような題材の作品を描かなくなったそうです。

速水御舟 「翠苔緑苔」 昭和3年(1928) 山種美術館
速10-6-2009_007

速10-9-2009_002

速水img957 (3)

速水img957 (1)

四曲一双の金箔地の屏風で、右隻に枇杷と青桐、つつじです。
枇杷の木には、まだ青い実から熟れた実まで付いていて、木の下では
黒猫が振り向いています。
左隻には紫陽花と2匹の白兎です。
紫陽花は咲き始めから満開まで様々に咲いています。
白兎は、向こうに黒猫がいるのも知らずに、呑気に草をかじったり、
寝ころがったりしています。

全体に、右奥から左手前に広がり、右上から左下に下がっていく構図です。
琳派風の装飾性を極め、きっちりとまとまった、近代的な作品です。
御舟の言葉、「もし無名の作家が残ったとして、この絵だけは面白い絵だと
後世言ってくれるだろう」。

「紅梅・白梅」 昭和4年(1929) 山種美術館
速水img950 (2)

まだ早春の冷気の残る夜に咲く梅の花です。
右下の老木の紅梅から左上の若木の白梅に視線を移すと、細い三日月も見えます。

「埃乃土人ノ灌漑」 昭和6年(1931) 山種美術館 
前田002

小品で、欧州旅行の船旅の途中で見かけた、エジプトの情景です。
2つの跳ね釣瓶を使った水汲みの様子を描いています。
人物の姿は古代のエジプト絵画風で、1人は赤い腰巻に白い鉢巻、
1人は白い腰巻に赤白の鉢巻です。
左右対称の面白い構図で、烏が1羽、のんびり止まっています。

速水御舟 「椿ノ花」 昭和8年(1933) 山種美術館
百花img045 (2)

椿の葉の艶やかさも表し、立体感があります。

速水御舟 「牡丹花(墨牡丹)」 昭和9年(1934) 山種美術館
御舟2

亡くなる前年の作品です。
描線を使わず、墨のにじみによって花弁を描き出しています。
墨色でありながら、華やかです。

速水御舟はさまざまな作風を試みており、「炎舞」の凄味や「翠苔緑苔」の装飾性には
目を見張るものがあります。

小林古径、速水御舟という近代日本画を代表する二人の作品の展示される、
見逃せない展覧会です。

山種美術館のHPです。

関連記事

【2023/05/30 17:24】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
comment
 
コメントを書く
コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
please comment















管理者にだけ表示を許可する

trackback
trackback url ↓
https://nekoarena.blog.fc2.com/tb.php/4961-24098938

プロフィール

chariot

Author:chariot
美術館・博物館めぐりとカフェの記事を書いています。

最近の記事

最近のコメント

最近のトラックバック

カテゴリー

ブログ内検索

月別アーカイブ

リンク

このブログをリンクに追加する

RSSフィード


| ホーム |