上野
東京国立博物館の総合文化展(平常展)の記事を3回に分け、今日はその2で、
茶道具と浮世絵を載せます。
「志野茶碗 銘 振袖」 美濃 安土桃山~江戸時代・16~17世紀

筒型の茶碗で、歪みや削りを入れて変化を持たせ、鉄絵で薄も描いています。
「大井戸茶碗 佐野井戸」 朝鮮時代・16世紀

かつての所有者の名が付いています。
大振りでのびやかな造りの茶碗です。
井戸茶碗は井戸のように深い茶碗という意味のようで、枇杷色と呼ばれる色の釉、
高い高台、高台辺りの梅花皮(かいらぎ)と呼ばれる釉薬の縮れなどが特徴です。
大井戸茶碗は井戸茶碗の中でも大振りのものをいいます。
「古銅象耳花入 銘 秋月」 室町時代・15~16世紀 松永安左エ門氏寄贈

北宋時代以降に古代の青銅器を模して作られた倣古銅器は唐物として日本に渡り、
日本でも作られています。
秋月の銘は小堀遠州によるものです。
「緋襷平鉢」 備前 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 個人蔵

焼成時に他の器と癒着しないよう巻いた藁の跡が襷(たすき)のように見えるので、
緋(火)、襷と呼ばれ、備前焼の特徴となっています。
「遊女立姿図」 長陽堂安知 江戸時代・18世紀


勝山髷を結い、片輪車に夕顔の夏らしい柄の振袖を着た遊女の堂々とした立ち姿です。
表装も斬新です。
長陽堂安知(生没年不詳)は肉筆浮世絵を描いた懐月堂安度の弟子で、
宝永・正徳年間(1704~16)に活躍していす。
「蚊帳美人図」 川又常行 江戸時代・18世紀


投げ島田を結った女性が蚊帳から出て、立膝で煙管を持ち、月を眺めています。
川又常行(1677~?)は狩野常信の弟子ともいわれ、肉筆の浮世絵美人画のみを
描いています。
「蚊帳から出る美人」 鈴木春信 江戸時代・18世紀

庭の池には燕子花が咲いて涼しげです。
「蚊帳美人図」 歌川国貞(三代豊国) 江戸時代・19世紀


つぶし島田の女性が桜に流水模様の着物姿で、朝顔を描いた団扇を手に涼んでいます。
表装に描かれた虫の音を聴いているのでしょうか。
「青樓藝子俄狂言盡・玉屋弥八内三味線こん、きくぢ、こきう いその」
礒田湖龍斎 江戸時代・18世紀

吉原では客足の落ちる8月に仮装や即興芸を披露しながら練り歩く吉原俄(にわか)を
催していました。
礒田湖龍斎(1735‐90?)は勝川春章と同時期の浮世絵師で、肉筆美人画も
よく描いています。
「青樓万歳俄・五月三番叟」 鳥文斎栄之筆 江戸時代・18世紀

青樓とは江戸では吉原遊郭を指します。
鳥文斎栄之(1756-1829)は直参の旗本で、十代将軍徳川家治に仕えたこともある
異色の絵師です。
「夏の宵」 喜多川歌麿 江戸時代・19世紀

大丸髷に雲竜模様の前帯を締めた花魁が縁台に腰掛け、煙管を手に胸もはだけて
くつろいでいます。
横で禿が団扇で扇いでいます。
「東都名所・両国の涼」 歌川国芳 江戸時代・19世紀

「東都名所」は風景版画のシリーズです。
両国橋辺りの夏の景色で、花火が上がり、涼み舟の客が物売り舟から何か買っています。
水に入っているのは両国橋東詰めの垢離場で相模の大山に参詣する人たちが水垢離を
しているところです。
大山詣りは江戸時代盛んに行われ、大きな木太刀を奉納していました。
「名所江戸百景・高輪うしまち」 歌川広重 江戸時代・安政4年(1857)

高輪牛町は寛永の頃に芝増上寺の社殿建築などの用材運搬用として、京都から
牛持人足を集め、住まわせた所で、車町という名でしたが、牛町とも呼ばれていました。
多い時には1000頭もの牛がいたそうです。
近景に大きく牛車の車輪を描いた、広重独特の構図です。
子犬が草鞋の紐を引っ張って遊び、西瓜の皮が散らばり、遠くには夕立の後の虹が見えます。
「三囲神社の夕立」 鳥居清長 江戸時代・18世紀

大判3枚続きで、夕立に遭って向島の三囲神社に逃げ込む人たちです。
干ばつの時、宝井其角がここで雨乞いの句、「遊ふた地や田を見めくりの神ならは」を
詠んだところ、翌日雨が降ったことでも有名な神社で、三井家の守り神ともなっています。
雷神たちも描かれています。
其角の句を吟味しているようです。

裸足で両刀を差しているのは足軽でしょうか。

chariot
東京国立博物館の総合文化展(平常展)の記事を3回に分け、今日はその2で、
茶道具と浮世絵を載せます。
「志野茶碗 銘 振袖」 美濃 安土桃山~江戸時代・16~17世紀

筒型の茶碗で、歪みや削りを入れて変化を持たせ、鉄絵で薄も描いています。
「大井戸茶碗 佐野井戸」 朝鮮時代・16世紀

かつての所有者の名が付いています。
大振りでのびやかな造りの茶碗です。
井戸茶碗は井戸のように深い茶碗という意味のようで、枇杷色と呼ばれる色の釉、
高い高台、高台辺りの梅花皮(かいらぎ)と呼ばれる釉薬の縮れなどが特徴です。
大井戸茶碗は井戸茶碗の中でも大振りのものをいいます。
「古銅象耳花入 銘 秋月」 室町時代・15~16世紀 松永安左エ門氏寄贈

北宋時代以降に古代の青銅器を模して作られた倣古銅器は唐物として日本に渡り、
日本でも作られています。
秋月の銘は小堀遠州によるものです。
「緋襷平鉢」 備前 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 個人蔵

焼成時に他の器と癒着しないよう巻いた藁の跡が襷(たすき)のように見えるので、
緋(火)、襷と呼ばれ、備前焼の特徴となっています。
「遊女立姿図」 長陽堂安知 江戸時代・18世紀


勝山髷を結い、片輪車に夕顔の夏らしい柄の振袖を着た遊女の堂々とした立ち姿です。
表装も斬新です。
長陽堂安知(生没年不詳)は肉筆浮世絵を描いた懐月堂安度の弟子で、
宝永・正徳年間(1704~16)に活躍していす。
「蚊帳美人図」 川又常行 江戸時代・18世紀


投げ島田を結った女性が蚊帳から出て、立膝で煙管を持ち、月を眺めています。
川又常行(1677~?)は狩野常信の弟子ともいわれ、肉筆の浮世絵美人画のみを
描いています。
「蚊帳から出る美人」 鈴木春信 江戸時代・18世紀

庭の池には燕子花が咲いて涼しげです。
「蚊帳美人図」 歌川国貞(三代豊国) 江戸時代・19世紀


つぶし島田の女性が桜に流水模様の着物姿で、朝顔を描いた団扇を手に涼んでいます。
表装に描かれた虫の音を聴いているのでしょうか。
「青樓藝子俄狂言盡・玉屋弥八内三味線こん、きくぢ、こきう いその」
礒田湖龍斎 江戸時代・18世紀

吉原では客足の落ちる8月に仮装や即興芸を披露しながら練り歩く吉原俄(にわか)を
催していました。
礒田湖龍斎(1735‐90?)は勝川春章と同時期の浮世絵師で、肉筆美人画も
よく描いています。
「青樓万歳俄・五月三番叟」 鳥文斎栄之筆 江戸時代・18世紀

青樓とは江戸では吉原遊郭を指します。
鳥文斎栄之(1756-1829)は直参の旗本で、十代将軍徳川家治に仕えたこともある
異色の絵師です。
「夏の宵」 喜多川歌麿 江戸時代・19世紀

大丸髷に雲竜模様の前帯を締めた花魁が縁台に腰掛け、煙管を手に胸もはだけて
くつろいでいます。
横で禿が団扇で扇いでいます。
「東都名所・両国の涼」 歌川国芳 江戸時代・19世紀

「東都名所」は風景版画のシリーズです。
両国橋辺りの夏の景色で、花火が上がり、涼み舟の客が物売り舟から何か買っています。
水に入っているのは両国橋東詰めの垢離場で相模の大山に参詣する人たちが水垢離を
しているところです。
大山詣りは江戸時代盛んに行われ、大きな木太刀を奉納していました。
「名所江戸百景・高輪うしまち」 歌川広重 江戸時代・安政4年(1857)

高輪牛町は寛永の頃に芝増上寺の社殿建築などの用材運搬用として、京都から
牛持人足を集め、住まわせた所で、車町という名でしたが、牛町とも呼ばれていました。
多い時には1000頭もの牛がいたそうです。
近景に大きく牛車の車輪を描いた、広重独特の構図です。
子犬が草鞋の紐を引っ張って遊び、西瓜の皮が散らばり、遠くには夕立の後の虹が見えます。
「三囲神社の夕立」 鳥居清長 江戸時代・18世紀

大判3枚続きで、夕立に遭って向島の三囲神社に逃げ込む人たちです。
干ばつの時、宝井其角がここで雨乞いの句、「遊ふた地や田を見めくりの神ならは」を
詠んだところ、翌日雨が降ったことでも有名な神社で、三井家の守り神ともなっています。
雷神たちも描かれています。
其角の句を吟味しているようです。

裸足で両刀を差しているのは足軽でしょうか。

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