三越前
日本橋の三井記念美術館では特別展、「超絶技巧、未来へ!」が開かれています。
会期は11月26日(日)までです。

三井記念美術館は過去2回、日本工芸の超絶技巧を紹介する展覧会を開いており、
今回は3回目です。
所蔵先の記載の無い作品は個人蔵です。
作品の一部は撮影可能です。
現代作家
金工
本郷真也 「Visible 01 境界」 2021年



展示室の入口に置かれています。
自在置物の技法を基にした鉄の鍛造で、実物大のカラスの骨格や筋肉の
形を作ってから羽根を付けています。
外からは見えませんが、カラスが間違って飲み込んだ異物を銀で作って
入れてあるそうです。
吉田泰一郎 「夜霧の犬」 2020年



銅で作ったボルゾイで、全身に銅の木の葉や花、蝶を貼り付けています。
長谷川清吉 「真鍮製 爪楊枝」2023年

艶消しした銀の容器に真鍮の爪楊枝がびっしりと入っています。
漆工
池田晃将 「百千金字塔香合」 2022年

木曽檜に漆を塗ったピラミッド型の香合です。
表面は螺鈿の数字で埋め尽くされ、デジタルな雰囲気があります。
池田晃将 「電光金針水晶飾箱」 2022年

木曽檜に漆を塗って石の様に見せ、断面で光る結晶は貝で表しています。
彦十蒔絵 若宮隆志 「「ねじが外れている」モンキー、工具箱、ねじ」 2023年


工具箱はヒバに漆が塗ってあり、モンキーレンチは乾漆に銀粉を塗って錆を
表現しています。
工具箱の赤には根来塗の趣きがあります。
彦十蒔絵 若宮隆志 「草花研ぎ出し蒔絵 渡辺省亭図引用」 2022年
漆黒の地の水注に渡辺省亭の「牡丹に蝶図」を写していて、蝶は描かず、
水注の蓋に留まらせています。
「牡丹に蝶図」 明治26年(1893)

樋渡賢 「羽根蒔絵杯」 2022年

研ぎ出し蒔絵で孔雀の羽根を描き、金粉を蒔いて輝かせています。
木彫
松本涼 「涅槃」 2021年


樟の一木から彫り出していて、仏花でもある菊の花の枯れていく様を涅槃に例えています。
前原冬樹 「《一刻》 スルメに茶碗」 2022年


朴の一木造りで、クリップの金属まで一木から彫り出しています。
大竹亮峯 「月光」 2020年
パンフレットに使われている作品です。
1年に1度だけ、夜に花を咲かせる月下美人が蝙蝠の羽根の形の花器に
挿してあります。
月下美人の原産国メキシコでは蝙蝠が花粉を運んでいるそうです。
花弁は鹿角、花器は神代欅を使っていて、花器に水を注ぐと花が開く仕掛けに
なっています。
ガラス
青木美歌 「あなたに続く森」


青木美歌さん(1981-2022)はバーナーでガラスを熔かす、バーナーワークと
いう技法で、透明なガラスを使い、バクテリア、ウイルス、細胞など、
「生命」をがテーマに制作されました。
ガラスという硬い素材を使いながら、さまざまな形で繊細で柔軟な生命を
表現されていましたが、昨年逝去されました。
青木美歌さんの作品の記事です。
以下は明治工芸です。
七宝
並河靖之 「梅鶯図小花瓶」

濃紺地の小さな瓶に有線七宝で梅とウグイスを描いています。
並河靖之(1845-1927)は色の境目に金属線を置いて絵柄をくっきりとさせる
有線七宝で有名です。
金工
海野勝珉 「孔雀図煙草箱」 清水三年坂美術館

羽根を広げた優美な姿の鳳凰を彫り込んでいます。
海野勝珉(しょうみん)(1844-1915)は東京美術学校の教授を務め、
帝室技芸員にも選ばれています。
木彫
泉亮之 「蛇纏髑髏」

一木造りで髑髏と蛇を彫り出していて、顎は動かせるようになっています。
泉亮之(1838-1918)は近江生まれの木彫家で、髑髏や蛇を得意としています。
明治24年(1891)にロシア皇太子(後のニコライ2世)が来日した時、作品が
買い上げられたこともあるそうです。
牙彫
無銘 「鳩の親子」


胴は牙彫(げちょう)、脚は真鍮、目は黒蝶貝で作られています。
餌をねだるヒヨコの嘴は舌まで表現されています。
牙彫は象牙や鹿の角などを使った彫刻で、明治時代は木彫より盛んだったそうです。
三井記念美術館で開かれる超絶技巧展に展示される作品の見せる技の素晴らしさには
いつも驚かされます。
2017年に三井記念美術館で開かれた「驚異の超絶技巧!-明治工芸から
現代アートまでー」展の記事です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は「国宝 雪松図と能面×能の意匠」展です。
会期は12月8日から2024年1月27日までです。
もう「雪松図屏風」の話が出る季節になりました。

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日本橋の三井記念美術館では特別展、「超絶技巧、未来へ!」が開かれています。
会期は11月26日(日)までです。

三井記念美術館は過去2回、日本工芸の超絶技巧を紹介する展覧会を開いており、
今回は3回目です。
所蔵先の記載の無い作品は個人蔵です。
作品の一部は撮影可能です。
現代作家
金工
本郷真也 「Visible 01 境界」 2021年



展示室の入口に置かれています。
自在置物の技法を基にした鉄の鍛造で、実物大のカラスの骨格や筋肉の
形を作ってから羽根を付けています。
外からは見えませんが、カラスが間違って飲み込んだ異物を銀で作って
入れてあるそうです。
吉田泰一郎 「夜霧の犬」 2020年



銅で作ったボルゾイで、全身に銅の木の葉や花、蝶を貼り付けています。
長谷川清吉 「真鍮製 爪楊枝」2023年

艶消しした銀の容器に真鍮の爪楊枝がびっしりと入っています。
漆工
池田晃将 「百千金字塔香合」 2022年

木曽檜に漆を塗ったピラミッド型の香合です。
表面は螺鈿の数字で埋め尽くされ、デジタルな雰囲気があります。
池田晃将 「電光金針水晶飾箱」 2022年

木曽檜に漆を塗って石の様に見せ、断面で光る結晶は貝で表しています。
彦十蒔絵 若宮隆志 「「ねじが外れている」モンキー、工具箱、ねじ」 2023年


工具箱はヒバに漆が塗ってあり、モンキーレンチは乾漆に銀粉を塗って錆を
表現しています。
工具箱の赤には根来塗の趣きがあります。
彦十蒔絵 若宮隆志 「草花研ぎ出し蒔絵 渡辺省亭図引用」 2022年
漆黒の地の水注に渡辺省亭の「牡丹に蝶図」を写していて、蝶は描かず、
水注の蓋に留まらせています。
「牡丹に蝶図」 明治26年(1893)

樋渡賢 「羽根蒔絵杯」 2022年

研ぎ出し蒔絵で孔雀の羽根を描き、金粉を蒔いて輝かせています。
木彫
松本涼 「涅槃」 2021年


樟の一木から彫り出していて、仏花でもある菊の花の枯れていく様を涅槃に例えています。
前原冬樹 「《一刻》 スルメに茶碗」 2022年


朴の一木造りで、クリップの金属まで一木から彫り出しています。
大竹亮峯 「月光」 2020年
パンフレットに使われている作品です。
1年に1度だけ、夜に花を咲かせる月下美人が蝙蝠の羽根の形の花器に
挿してあります。
月下美人の原産国メキシコでは蝙蝠が花粉を運んでいるそうです。
花弁は鹿角、花器は神代欅を使っていて、花器に水を注ぐと花が開く仕掛けに
なっています。
ガラス
青木美歌 「あなたに続く森」


青木美歌さん(1981-2022)はバーナーでガラスを熔かす、バーナーワークと
いう技法で、透明なガラスを使い、バクテリア、ウイルス、細胞など、
「生命」をがテーマに制作されました。
ガラスという硬い素材を使いながら、さまざまな形で繊細で柔軟な生命を
表現されていましたが、昨年逝去されました。
青木美歌さんの作品の記事です。
以下は明治工芸です。
七宝
並河靖之 「梅鶯図小花瓶」

濃紺地の小さな瓶に有線七宝で梅とウグイスを描いています。
並河靖之(1845-1927)は色の境目に金属線を置いて絵柄をくっきりとさせる
有線七宝で有名です。
金工
海野勝珉 「孔雀図煙草箱」 清水三年坂美術館

羽根を広げた優美な姿の鳳凰を彫り込んでいます。
海野勝珉(しょうみん)(1844-1915)は東京美術学校の教授を務め、
帝室技芸員にも選ばれています。
木彫
泉亮之 「蛇纏髑髏」

一木造りで髑髏と蛇を彫り出していて、顎は動かせるようになっています。
泉亮之(1838-1918)は近江生まれの木彫家で、髑髏や蛇を得意としています。
明治24年(1891)にロシア皇太子(後のニコライ2世)が来日した時、作品が
買い上げられたこともあるそうです。
牙彫
無銘 「鳩の親子」


胴は牙彫(げちょう)、脚は真鍮、目は黒蝶貝で作られています。
餌をねだるヒヨコの嘴は舌まで表現されています。
牙彫は象牙や鹿の角などを使った彫刻で、明治時代は木彫より盛んだったそうです。
三井記念美術館で開かれる超絶技巧展に展示される作品の見せる技の素晴らしさには
いつも驚かされます。
2017年に三井記念美術館で開かれた「驚異の超絶技巧!-明治工芸から
現代アートまでー」展の記事です。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は「国宝 雪松図と能面×能の意匠」展です。
会期は12月8日から2024年1月27日までです。
もう「雪松図屏風」の話が出る季節になりました。

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