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「やまと絵 受け継がれる王朝の美」 東京国立博物館 その1
上野
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上野の東京国立博物館では特別展「やまと絵 受け継がれる王朝の美」が開かれています。
会期は12月3日(日)までです。

やまと絵img148 (21)


4大絵巻の「源氏物語絵巻」「鳥獣戯画」「伴大納言絵巻」「信貴山縁起絵巻」や「平家納経」
「平治物語絵巻」など、素晴らしいやまと絵の数々が揃う貴重な展覧会です。

会期中、細かい展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認下さい。
記事は3回に分け、今日は11月5日まで展示される作品を中心に載せます。
写真の一部は過去の展覧会のものです。


序章 伝統と革新―やまと絵の革新―

平安から鎌倉にかけて山水図屏風の展示です。

「山水図屏風」 鎌倉時代 13世紀 京都・神護寺 国宝
やまと絵img148 (12)

11月5日までの展示です。
現存最古のやまと絵屏風で、絵を一枚ずつ屏風に貼り付ける一扇縁取という古い形式です。

「四季山水図屏風」 伝周文 室町時代・15世紀 東京国立博物館 重要文化財
右隻
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左隻
はDSC06837

11月5日までの展示です。
中国のさまざまな山水図を組合わせて画面をつくっています。


第1章 やまと絵の成立―平安時代ー

「片輪車蒔絵螺鈿手箱」 平安時代・12世紀 東京国立博物館 国宝
国003

11月5日までの展示です。
牛車の車輪の乾燥による割れを防ぐために川に浸けている風景を表しています。
水の流れと車輪を取り合わせたデザイン感覚は新鮮です。
泥の中に咲く蓮の花もイメージされているそうです。

「和漢朗詠集」 巻下(益田本) 平安時代・11世紀 東京国立博物館 重要文化財
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11月5日までの展示です。
宋より渡来の紙など、数種類の紙をつなげています。
三井物産の設立者の益田孝(鈍翁)が所持していたので、この名があります。

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小さな飛び雲文様の入った料紙を使っています。

「伴大納言絵巻 巻上」 平安時代 12世紀 出光美術館 国宝
やまと絵img148 (23)

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10月22日までの展示です。
貞観8年(866)に起きた応天門の変を題材に平安時代末期に描かれた3巻の絵巻です。
応天門の変は、大納言伴善男が宮城の応天門に放火したとされ、流罪になった事件で、
これにより大伴氏は没落し、藤原氏が権勢を強めています。
上巻には炎上する応天門と駆け付ける役人、集まって大騒ぎする人々、清和天皇に拝謁する
藤原良房などが描かれています。
驚き騒ぐ人々の様子や赤い焔と黒煙を上げる応天門の描写は臨場感にあふれています。

「地獄草紙」 平安~鎌倉時代・12~13世紀 東京国立博物館 国宝
とIMG_0696

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11月5日までの展示です。
岡山の安住院に伝来の絵巻で、正法念処経に基く4つの地獄が描かれています。
いずれも酒にまつわる罪を犯した者たちで、業火に焼かれ、虫や動物に食われています。

「病草紙断簡 不眠の女」 平安時代・12世紀 サントリー美術館 重要文化財
絵巻1

11月5日までの展示です。
板張りの床の上に敷物を敷いて、侍女たちでしょうか、女たちが眠っています。
他の人たちが寝入っている中で、一人だけ眠れずに起き上がっています。
本人にとっては辛いでしょうが、この時代にも不眠症があったのかと思うと、
観ていて面白くなります。


第2章 やまと絵の新様―鎌倉時代―

「佐竹本三十六歌仙絵 小野小町」 鎌倉時代 13世紀 個人蔵 重要文化財
名005

11月5日までの展示です。

 いろ見えでうつろふものはよの中の人のこゝろのはなにぞありける

絶世の美女ということで、顔は見せないで描かれています。

佐竹本三十六歌仙絵は元は大名の佐竹家に伝わった2巻の絵巻だったものです。
大正時代に売りに出され、新しい所有者も第一次大戦後の不況で手放すことになった時、
このままだとあまりに高額で買い手が付かないため、大正8年(1919)年に巻頭部分の
「住吉明神」を含め37枚に切断され、購入希望者にくじ引きで絵を割当てて売却されています。
これを決めたのは三井物産の設立者で茶人としても有名な益田孝(鈍翁)で、
自身はもっとも華やかな「斎宮女御」を入手しています。

「佐竹本三十六歌仙絵 小大君」 鎌倉時代 13世紀
 大和文華館蔵 重要文化財

名004

11月5日までの展示です。

 いはゞしのよるのちぎりも絶ぬべしあくるわびしきかづらきの神

小大君の家系は不詳で、三十六歌仙の一人です。

「虚空蔵菩薩像」 鎌倉時代・13世紀 重要文化財
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11月19日までの展示です。
虚空蔵菩薩は広大無限の智慧と慈悲を表す菩薩とされています。
下に描かれた山は伊勢の朝熊山で、虚空蔵菩薩を朝熊山権現の本地仏として
描いています。

「西園寺実氏夫人願文」 伝世尊寺経尹筆 鎌倉時代・弘安5年(1282)  重要文化財
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ゆったりした書風で、豪華な料紙に書かれています。
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11月5日までの展示です。
太政大臣西園寺実氏の夫人、藤原貞子(1196 - 1302)が自らの生前に菩提を弔う
仏事である逆修供養を行なった際の願文です。
藤原貞子は107歳の長寿を保ったということです。

「伏見天皇宸翰願文」 伏見天皇宸筆 鎌倉時代・正和5年(1316)  重要文化財
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11月5日までの展示です。
たぐいまれな能筆として知られた伏見天皇(1265~1317)の書です。
料紙には藤の花が箔絵で描かれています。

「平治物語絵巻 六波羅行幸巻」 鎌倉時代 13世紀 東京国立博物館 国宝 
平治

11月5日までの展示で、展覧会ではこれより少し前の二条天皇が牛車に乗って
内裏を脱出する場面が展示されています。
平治の乱は平清盛が源義朝を破って、平家全盛の基を築いた戦いです。
二条天皇を迎えた平家の武者たちが居並んでいる場面です。

「天狗草紙」 鎌倉時代 永仁4年(1296)頃 重要文化財
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11月5日までの展示です。
天狗草紙絵巻は奈良・京都の大寺院の僧侶の驕慢を天狗にたとえて風刺・非難
したものとのことです。
展示されている部分は世の無常を悟った天狗たちが集まって、それぞれの
宗派の方法で修行に励むことを誓っている場面です。
天台、華厳、法相、三論、念仏などの名前が見えます。

「駿牛図」 鎌倉時代・13世紀 重要文化財
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11月5日までの展示です。
牛車を曳く優れた牛を描いていて、白抜きの輪郭線や力のこもった脚の表現など、
巧みな描き振りです。
表装も片輪車をあしらって洒落ています。
元は図巻でしたが、現在は断簡になっています。


第3章 やまと絵の成熟―南北朝・室町時代― 

「源氏物語絵扇面貼交屛風」 左隻 室町時代 16世紀 広島・浄土寺
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11月5日までの展示です。
六曲一双の屏風で、源氏物語の各帖の場面が扇絵に描かれていて、物語の順序ではなく、
季節の進行に沿って貼られています。
見ているだけで物語の世界に遊ぶことが出来ます。

「日月松鶴図屏風」 左隻 室町時代 16世紀 三井記念美術館 重要文化財
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11月5日までの展示です。
右隻には金の板の太陽が貼られ、クマザサ、タンポポ、スミレ、ツツジが描かれています。
左隻には銀の板の三日月が貼られ、アシ、ヤブコウジが描かれています。
右から左に季節が移り、アシは左に行くほど枯れてきて、時の経過を表しています。
室町時代の屏風絵は後の琳派に比べて、重みがあります。

「四季花鳥図屏風」 右隻 狩野元信 天文19年(1550) 兵庫・白鶴美術館
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11月5日までの展示です。
狩野派2代目、狩野元信の力作で、後の安土桃山時代の豪華な障壁画の基本と
なっています。
周防の大内義隆は明への朝貢品として狩野元信に花鳥図屏風を注文しており、
おそらくこのような品だったろうと思われます。
天文18年はフランシスコ・ザビエルが鹿児島に上陸した年であり、戦国時代が海外と
盛んに交流した時代だったことが分かります。


終章 やまと絵と四季―受け継がれる王朝の美―

「月次風俗図屏風」 室町時代 16世紀 東京国立博物館 重要文化財
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11月5日までの展示です。
月次絵(つきなみえ)は12か月それぞれの行事や風景を描いた絵で、平安時代以来の
伝統があります。
第8扇には春日神社社頭の祭りと雪遊びが描かれています。

「観楓図屏風」 狩野秀頼 室町~安土桃山時代・16世紀 国宝
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11月5日までの展示です。
展示室の最後に置かれていて、安土桃山時代の始まりを示しています。
紅葉の名所、高尾の紅葉狩の情景を大らかに描いていて、近世初期風俗画の
代表作とされています。
狩野秀頼は生没年未詳で、狩野元信の次男、またはその子とされています。

展覧会のHPです。

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【2023/10/14 19:34】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(2) |
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コメントは承認後に公開されます。ご了承ください。
  • こんばんは。
  • コメント有難うございます。
    浄土寺の屏風は六曲一双の全面に沢山の扇面が貼られているので、とても賑わしく迫力があります。

    平日の朝一番か閉館前を狙うという方法もありますが、その時間の都合が付くかという問題もあります。
    10月22日まで鳥獣戯画甲巻が展示されているので、この期間を避けると少し空くかもしれません。
    私は初日の夕方に行ったので、それほど混雑はしていませんでしたが、何せ物凄い企画で、
    今後どれだけ混雑するか分からないのが怖い所なので、人数が限定される予約の方が確実かもしれません。

    【2023/10/14 23:41】 url[chariot #H4z1joGM] [ 編集]
  • この秋一番気になっている展覧会はこれです。

    私がずっと観たいと思っている尾道浄土寺の「源氏物語絵扇面散屏風」も展示されるとあっては、ぜひとも足を運びたいですね。

    土日祝日は予約制とのことですが、この予約制を利用するほうが、ウィークデーよりも空いているでしょうか?

    【2023/10/14 22:05】 url[ばーばむらさき #v9aI.q/w] [ 編集]
    please comment















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