上野
東京国立博物館の総合文化展(平常展)で開かれている、特集「近世のやまと絵
-王朝美の伝統と継承-」の記事を2回に分け、今日はその2です。
会期は12月3日(日)までです。
写真は以前に撮影したものです。
「柳橋水車図屏風」 筆者不詳 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 重要美術品



金地の画面をまたぐ大きな木の橋と、若葉を付けた柳の枝で、若葉は一枚一枚
ていねいに描き込まれています。
川には岸を守る蛇籠(じゃかご)とともに水車が見えるので、宇治川と分かります。
蒔絵のように装飾的ですが、川の流れはリズムのある力強い線で描かれ、
桃山風の力強さを感じます。
「粟穂鶉図屏風」 8曲1双 土佐光起 江戸時代・17世紀 個人蔵 重要美術品




秋の景色の穂を垂れる粟と鶉の取り合わせです。
土佐光起は鶉の絵の名手とされています。
「秋郊鳴鶉図」 土佐光起、土佐光成 江戸時代・17世紀

菊、薄、桔梗などの秋草と鶉という、秋らしい風情の屏風です。
宮中絵師の土佐光起(1617-1691)と子の光成(1647-1710)の合作で、
鶉の名手といわれた光起が鶉を、光成が秋草を描いています。
酒井抱一の「秋草鶉図」を思い出します。
「十二ヶ月花鳥図屏風」 狩野永敬 江戸時代・17世紀
右隻

左隻

藤原定家の詠んだ「詠花鳥和歌各十二首」を元に右隻に春夏、左隻に秋冬を
品良く優美に描いています。
狩野永敬は狩野山楽から4代目の京狩野家の絵師です。
「囲碁図」 冷泉為恭 江戸時代・19世紀


宇多天皇、醍醐天皇に仕えた碁の名手、寛蓮が醍醐天皇と碁を打っているところです。
金の枕を賭けた対局で、横の机に金の枕が置いてあり、寛蓮が勝ったということです。
「色紙三十六歌仙図屏風」 近衛信尹、松花堂昭乗他筆 江戸時代・17世紀

三十六歌仙とその歌の書かれた色紙が金屏風に貼られています。
紀友則 夕されば螢よりけにもゆれども ひかりみねばや人のつれなさ

山部赤人 和歌の浦にしおみちくればかたをなみ あしべをさしてたづ鳴きわたる

伊勢 三輪の山いかに待ちみむ年ふとも たずぬる人もあらじと思へば

小野小町 いろみえでうつろふものはよのなかの ひとのこころのはなにぞありける

坂上是則 みよし野の山のしら雪つもるらし ふるさとさむくなりまさるなり

藤原興風 契りけむ心ぞつらきたなばたの としに一度あふは逢かは

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東京国立博物館の総合文化展(平常展)で開かれている、特集「近世のやまと絵
-王朝美の伝統と継承-」の記事を2回に分け、今日はその2です。
会期は12月3日(日)までです。
写真は以前に撮影したものです。
「柳橋水車図屏風」 筆者不詳 安土桃山~江戸時代・16~17世紀 重要美術品



金地の画面をまたぐ大きな木の橋と、若葉を付けた柳の枝で、若葉は一枚一枚
ていねいに描き込まれています。
川には岸を守る蛇籠(じゃかご)とともに水車が見えるので、宇治川と分かります。
蒔絵のように装飾的ですが、川の流れはリズムのある力強い線で描かれ、
桃山風の力強さを感じます。
「粟穂鶉図屏風」 8曲1双 土佐光起 江戸時代・17世紀 個人蔵 重要美術品




秋の景色の穂を垂れる粟と鶉の取り合わせです。
土佐光起は鶉の絵の名手とされています。
「秋郊鳴鶉図」 土佐光起、土佐光成 江戸時代・17世紀

菊、薄、桔梗などの秋草と鶉という、秋らしい風情の屏風です。
宮中絵師の土佐光起(1617-1691)と子の光成(1647-1710)の合作で、
鶉の名手といわれた光起が鶉を、光成が秋草を描いています。
酒井抱一の「秋草鶉図」を思い出します。
「十二ヶ月花鳥図屏風」 狩野永敬 江戸時代・17世紀
右隻

左隻

藤原定家の詠んだ「詠花鳥和歌各十二首」を元に右隻に春夏、左隻に秋冬を
品良く優美に描いています。
狩野永敬は狩野山楽から4代目の京狩野家の絵師です。
「囲碁図」 冷泉為恭 江戸時代・19世紀


宇多天皇、醍醐天皇に仕えた碁の名手、寛蓮が醍醐天皇と碁を打っているところです。
金の枕を賭けた対局で、横の机に金の枕が置いてあり、寛蓮が勝ったということです。
「色紙三十六歌仙図屏風」 近衛信尹、松花堂昭乗他筆 江戸時代・17世紀

三十六歌仙とその歌の書かれた色紙が金屏風に貼られています。
紀友則 夕されば螢よりけにもゆれども ひかりみねばや人のつれなさ

山部赤人 和歌の浦にしおみちくればかたをなみ あしべをさしてたづ鳴きわたる

伊勢 三輪の山いかに待ちみむ年ふとも たずぬる人もあらじと思へば

小野小町 いろみえでうつろふものはよのなかの ひとのこころのはなにぞありける

坂上是則 みよし野の山のしら雪つもるらし ふるさとさむくなりまさるなり

藤原興風 契りけむ心ぞつらきたなばたの としに一度あふは逢かは

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冷泉為恭は古典を研究し、高雅な作風をつくり上げた絵師ですが、幕府の密偵だと勤皇派に疑われて付け回された挙句、殺されています。
宮廷文化の継承に務めたのに無残なことではあります。