日比谷・有楽町
日比谷の出光美術館では、「青磁—世界を魅了したやきもの」展が開かれています。
会期は2024年1月28日(日)までです。
12月25日から〜1月4日は年末年始で休館です。

青磁は植物灰を主成分にした青磁釉を施し、青緑色に発色した磁器のことです。
中国の越州窯や龍泉窯の他、高麗、日本、東南アジアに広がった青磁を特集した
展覧会です。
青磁になる前の西周や戦国時代の灰釉の陶器も何点か展示されています。
「青磁天鶏壺」 南北朝時代 出光美術館

高さ47.2㎝の大きな壺で、薄く釉が掛けられています。
青磁は土と水と交通路に恵まれた江南地方で作られましたが、やがて北朝にも
広まっています。
この壺は北朝のものと思われます。
唐時代以降、青磁は碧玉のような色を好まれて多く作られ、特に北宋・南宋時代の
陝西省の耀州窯、浙江省の南宋官窯、越州窯や龍泉窯が有名です。
「青磁刻花牡丹文壺」 北宋時代 耀州窯 出光美術館

高さ10.2㎝の小さな壺です。
耀州窯は陝西省銅川市黄堡鎮にあった窯で、唐代から金代まで続いています。
北宋時代はオリーブグリーンと呼ばれる緑色の釉が特徴で、片切彫りという技法で
牡丹を彫っています。
「青磁下蕪花生」 南宋官窯 南宋時代 出光美術館 重要文化財

ふっくらとした形の青磁の瓶です。
藤色をした貫入(釉薬のヒビ)が適度にあって、アクセントを付けています。
官窯(宮廷の窯)の製品だけあって、上品な姿です。
「青磁碗」 南宋時代 龍泉窯 出光美術館

径11.3㎝の小さな碗で、口縁のすぐ下をややすぼめ、口縁を広げています。
高台の部分は釉薬を剥ぎ取ってあります。
龍泉窯は浙江省龍泉市周辺にあった窯で、南宋から元時代に青磁を生産していました。
澄んだ青色の、貫入(釉薬のヒビ)のほとんど無い器体が特徴です。
「青磁輪花茶碗 銘 馬蝗絆」 龍泉窯
南宋時代 東京国立博物館 重要文化財

平重盛の所持と伝えられる品ですが、制作の時代はもっと新しいようです。
足利義政の所有となったときにひび割れが生じたので、明に送って代わりの品を
求めたところ、今ではこのような品は作れないとのことで、鎹(かすがい)を打って
修理してきたとの言い伝えがあります。
その鎹を大きな蝗(いなご)に見立てた命銘です。
馬蝗は馬に取り付いたイナゴではなく、ヒルだという説もあります。
ごく薄手の茶碗で、澄み切った青色をしており、優美な逸品です。
ただ、茶碗として使った後は無いとのことです。
「青磁筍形瓶」 龍泉窯 南宋時代 根津美術館 重要文化財

澄んだ青色をした青磁は砧青磁と呼ばれています。
竹の節のような輪があるので、筍の名があります。
4代将軍徳川家綱から堀田正俊に下され、堀田家に伝来しています。
「青磁貼花牡丹文不遊環耳瓶」 龍泉窯 南宋~元時代 出光美術館

古代青銅器の形を模していますが、耳に付けた環は釉薬によって器に
貼り付いて動かないので、「不遊環」の名が付いています。
「青磁袴腰香炉」 龍泉窯 南宋時代~元時代 出光美術館 重要文化財

3本足の青銅器を模した径約22㎝の大きな香炉で、胴の部分が袴を着けた
ような形から名付けられました。
日本にも多く伝わり、寺院などで用いられたようで、鎌倉の円覚寺にも伝存しています。
「青磁透彫蓮花文香炉」 龍泉窯 元時代 根津美術館

小さな香炉で、よく使われていたのか、割れて金継ぎが入っています。
「青磁鎬文壺」 龍泉窯 元時代 出光美術館

高さ32.6㎝の大きな蓋付壺で、胴の張った酒会壺と呼ばれる形です。
堂々とした姿をしており、胴に巡らせた縦筋が見事で、蓮の葉形の蓋には茎を模した
摘みが付いています。
「珠光青磁茶碗」 同安窯系 南宋時代 出光美術館

室町時代の茶人、村田珠光がこの系統の器を抹茶茶碗に採用した
ことによる命名です。
青磁といっても、龍泉窯のような格式の高い青磁ではなく、龍泉窯を模して
福建省周辺で焼かれた粗製の青磁です。
薄緑色で、作りは浅く、外側には櫛目模様、見込みにも丸く猫掻き文
と呼ばれる引っ掻き模様が入り、底には緑色の釉薬が溜まっています。
村田珠光はこのようなくだけた物を好んだとのことです。
「青磁陰刻牡丹唐草文瓢形水注・承盤」 高麗時代 出光美術館

翡色青磁と呼ばれる濃い青緑色で、一面に浅く牡丹唐草文が彫ってあります。
温めるための承盤が付いており、酒器として使われたものと思われます。
高麗青磁は朝鮮半島南部で焼かれました。
「青磁染付宝尽文大皿」 鍋島藩窯 江戸時代中期 出光美術館

白磁の上に青磁と染付を施し、笙、隠れ蓑、軍配、宝珠、巻物、法螺貝、びんざらさ、
砂金袋などの宝を並べています。
鍋島焼は幕府や大名への贈答品として制作された高級磁器です。
板谷波山の青磁も3点、展示されています。
「青磁下蕪花瓶」 板谷波山 昭和32年(1957) 出光美術館

龍泉窯に倣った伝統的な下蕪型の青磁で、植物模様を加えています。
本来は皿の装飾の鎬文蓮弁を工夫して瓶に用いています。
葆光彩磁で有名な板谷波山ですが、中国の青磁や白磁など幅広く研究しています。
青磁の前の灰釉に始まり、青磁の最盛期の南宋時代を中心に高麗や日本の作品もあって、
青磁の長い歴史を辿ることが出来ます。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は生誕300年記念「池大雅 ―陽光の山水」展です。
会期は2024年2月10日(土)から3月24日(日)までです。
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日比谷の出光美術館では、「青磁—世界を魅了したやきもの」展が開かれています。
会期は2024年1月28日(日)までです。
12月25日から〜1月4日は年末年始で休館です。

青磁は植物灰を主成分にした青磁釉を施し、青緑色に発色した磁器のことです。
中国の越州窯や龍泉窯の他、高麗、日本、東南アジアに広がった青磁を特集した
展覧会です。
青磁になる前の西周や戦国時代の灰釉の陶器も何点か展示されています。
「青磁天鶏壺」 南北朝時代 出光美術館

高さ47.2㎝の大きな壺で、薄く釉が掛けられています。
青磁は土と水と交通路に恵まれた江南地方で作られましたが、やがて北朝にも
広まっています。
この壺は北朝のものと思われます。
唐時代以降、青磁は碧玉のような色を好まれて多く作られ、特に北宋・南宋時代の
陝西省の耀州窯、浙江省の南宋官窯、越州窯や龍泉窯が有名です。
「青磁刻花牡丹文壺」 北宋時代 耀州窯 出光美術館

高さ10.2㎝の小さな壺です。
耀州窯は陝西省銅川市黄堡鎮にあった窯で、唐代から金代まで続いています。
北宋時代はオリーブグリーンと呼ばれる緑色の釉が特徴で、片切彫りという技法で
牡丹を彫っています。
「青磁下蕪花生」 南宋官窯 南宋時代 出光美術館 重要文化財

ふっくらとした形の青磁の瓶です。
藤色をした貫入(釉薬のヒビ)が適度にあって、アクセントを付けています。
官窯(宮廷の窯)の製品だけあって、上品な姿です。
「青磁碗」 南宋時代 龍泉窯 出光美術館

径11.3㎝の小さな碗で、口縁のすぐ下をややすぼめ、口縁を広げています。
高台の部分は釉薬を剥ぎ取ってあります。
龍泉窯は浙江省龍泉市周辺にあった窯で、南宋から元時代に青磁を生産していました。
澄んだ青色の、貫入(釉薬のヒビ)のほとんど無い器体が特徴です。
「青磁輪花茶碗 銘 馬蝗絆」 龍泉窯
南宋時代 東京国立博物館 重要文化財

平重盛の所持と伝えられる品ですが、制作の時代はもっと新しいようです。
足利義政の所有となったときにひび割れが生じたので、明に送って代わりの品を
求めたところ、今ではこのような品は作れないとのことで、鎹(かすがい)を打って
修理してきたとの言い伝えがあります。
その鎹を大きな蝗(いなご)に見立てた命銘です。
馬蝗は馬に取り付いたイナゴではなく、ヒルだという説もあります。
ごく薄手の茶碗で、澄み切った青色をしており、優美な逸品です。
ただ、茶碗として使った後は無いとのことです。
「青磁筍形瓶」 龍泉窯 南宋時代 根津美術館 重要文化財

澄んだ青色をした青磁は砧青磁と呼ばれています。
竹の節のような輪があるので、筍の名があります。
4代将軍徳川家綱から堀田正俊に下され、堀田家に伝来しています。
「青磁貼花牡丹文不遊環耳瓶」 龍泉窯 南宋~元時代 出光美術館

古代青銅器の形を模していますが、耳に付けた環は釉薬によって器に
貼り付いて動かないので、「不遊環」の名が付いています。
「青磁袴腰香炉」 龍泉窯 南宋時代~元時代 出光美術館 重要文化財

3本足の青銅器を模した径約22㎝の大きな香炉で、胴の部分が袴を着けた
ような形から名付けられました。
日本にも多く伝わり、寺院などで用いられたようで、鎌倉の円覚寺にも伝存しています。
「青磁透彫蓮花文香炉」 龍泉窯 元時代 根津美術館

小さな香炉で、よく使われていたのか、割れて金継ぎが入っています。
「青磁鎬文壺」 龍泉窯 元時代 出光美術館

高さ32.6㎝の大きな蓋付壺で、胴の張った酒会壺と呼ばれる形です。
堂々とした姿をしており、胴に巡らせた縦筋が見事で、蓮の葉形の蓋には茎を模した
摘みが付いています。
「珠光青磁茶碗」 同安窯系 南宋時代 出光美術館

室町時代の茶人、村田珠光がこの系統の器を抹茶茶碗に採用した
ことによる命名です。
青磁といっても、龍泉窯のような格式の高い青磁ではなく、龍泉窯を模して
福建省周辺で焼かれた粗製の青磁です。
薄緑色で、作りは浅く、外側には櫛目模様、見込みにも丸く猫掻き文
と呼ばれる引っ掻き模様が入り、底には緑色の釉薬が溜まっています。
村田珠光はこのようなくだけた物を好んだとのことです。
「青磁陰刻牡丹唐草文瓢形水注・承盤」 高麗時代 出光美術館

翡色青磁と呼ばれる濃い青緑色で、一面に浅く牡丹唐草文が彫ってあります。
温めるための承盤が付いており、酒器として使われたものと思われます。
高麗青磁は朝鮮半島南部で焼かれました。
「青磁染付宝尽文大皿」 鍋島藩窯 江戸時代中期 出光美術館

白磁の上に青磁と染付を施し、笙、隠れ蓑、軍配、宝珠、巻物、法螺貝、びんざらさ、
砂金袋などの宝を並べています。
鍋島焼は幕府や大名への贈答品として制作された高級磁器です。
板谷波山の青磁も3点、展示されています。
「青磁下蕪花瓶」 板谷波山 昭和32年(1957) 出光美術館

龍泉窯に倣った伝統的な下蕪型の青磁で、植物模様を加えています。
本来は皿の装飾の鎬文蓮弁を工夫して瓶に用いています。
葆光彩磁で有名な板谷波山ですが、中国の青磁や白磁など幅広く研究しています。
青磁の前の灰釉に始まり、青磁の最盛期の南宋時代を中心に高麗や日本の作品もあって、
青磁の長い歴史を辿ることが出来ます。
展覧会のHPです。
次回の展覧会は生誕300年記念「池大雅 ―陽光の山水」展です。
会期は2024年2月10日(土)から3月24日(日)までです。
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