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「北宋書画精華展」 根津美術館
表参道
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南青山の根津美術館では特別展、「北宋書画精華」が開かれています。
会期は12月3日(日)までです。

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会期中、一部展示替えがありますので、展覧会のHPでご確認下さい。
細かい作品が多いので単眼鏡の持参をお勧めします。

「五馬図巻」(部分) 李公麟 北宋時代 11世紀 東京国立博物館 重要美術品
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李公麟(1049 - 1106)は科挙の進士試験に合格した官僚で、画家、古物収集家
でもあります。
「五馬図巻」は西域の国から北宋に献上された5頭の馬を描いた図巻です。
画像の馬は于闐国(現在の新疆ウイグル自治区のホータン)から贈られた馬で、
異国風の男が手綱を持っており、馬や人物の顔の描写も実に的確です。
手綱や人物の顔は僅かに彩色され、白描の画家と思われていた李公麟のイメージを
変える作品とのことです。
清の皇室が保有し、乾隆帝も愛蔵していましたが、清の滅亡時に日本に流出し、
2018年に東京国立博物館の所蔵となりました。 
右側に「乾隆御覧之宝」や「古希天子」の印、左側に息子の嘉慶帝などの印が
押してあります。

「孝経図巻」(部分) 李公麟 北宋時代
 元豊8年(1085)頃 アメリカ・メトロポリタン美術館

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孔子の教えをまとめた孝経の本文に白描で絵が添えられています。
五刑章と広要道章第が書かれた部分です。
「五馬図巻」と並んで李公麟の描いた絵が揃う、珍しい機会です。

「江山楼観図巻」(部分) 燕文貴 北宋時代 10~11世紀 大阪市立美術館
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濃淡を使い分けた筆遣いで、山河を嵐が過ぎ去る様子を生き生きと描いています。
風雨に驚き、慌てて傘や荷物を担いで屋敷に駆け込む人たちも見えます。
燕文貴(生没年不詳)は北宋画院の画家です。

「寒林重汀図」 伝 薫源 五代 10世紀 兵庫・黒川古文化研究所
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林の中には道を行く人や家の中の人物も小さく描き込まれています。
薫源(934 - 962)は五代~北宋初期の画家で、江南風景画の祖とされています。
江南風景画は、そそり立つ山岳ではなく、穏やかな水辺の風景を描きます。
薫源の真筆は残っていないため、この絵はその作風を知る貴重な資料になっています。

「喬松平遠図」 李成(款) 原本:五代~北宋時代
 10世紀 三重・澄懐堂美術館

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模本で、11月3日から11月19日までの展示です。
李成は五代~北宋初期の画家で、淡い水墨による山水画を描いています。
李成の作品は子孫が回収して回ったためほとんど残っておらず、「喬松平遠図」は
画風を良く伝えているとされています。

「孔雀明王像」 北宋時代 11世紀 京都・仁和寺 国宝
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11月21日からの展示です。
密教修法の孔雀経法を修する際の本尊で、大きく羽根を広げた孔雀に乗った
蓮華座に坐しています。
通常は一面四臂ですが、この像は三面六臂の珍しい姿です。

「伏波神祠詩巻」(部分)  黄庭堅 北宋時代
 建中靖国元年(1101) 東京・永青文庫 重要文化財

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前期と後期で巻替えがあります。
黄庭堅(1045 – 1105)は北宋の書家、詩人で、北宋四大書家の一人とされています。
唐の劉禹錫の詩、「経伏波神祠詩」を書き、自分の跋文を加えたものです。
湖南省壺頭の後漢の伏波将軍、馬援の祠を通り過ぎた時の詩で、書き出しは
蒙々篁竹下、有路上壺頭とあります。
進士に合格した官僚でもありますが、王安石の新法派と対立する旧法派に属していたため、
左遷と登用を繰り返しています。
政争に敗れても処刑されず復帰できたのは北宋初代皇帝趙匡胤の、言論を理由に
士大夫を殺してはならないという遺訓によるものです。

「霊山変相図」 北宋時代 10世紀 京都・清凉寺 国宝
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開祖の奝然(ちょうねん)が宋に渡って修行の後、持ち帰った国宝釈迦如来立像の
胎内に納められていた品々の一つです。
他には布で出来た五臓六腑や写経なども入っていました。
版画で、釈迦如来が霊鷲山(りょうじゅせん)で説法する様を表しており、法華経の
多宝塔も描かれています。
釈迦を取り巻く羅漢たちの表情も生き生きとしています。

「巻子本 古今和歌集序」(部分) 平安時代 12世紀 東京・大倉集古館 国宝
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前期と後期で巻替えがあります。
古今和歌集の仮名序は、撰者の一人の紀貫之の作とされています。
「花に鳴く鶯、水に住む蛙の声を聞けば、生きとし生きるもの、
いづれか歌をよまざりける。」の言葉が有名です。
北宋より渡った、白、朱、藍、緑などの色や地模様を変えた32枚の料紙に
書かれていて、色の濃い料紙の部分では字も太めになっています。
歌人として有名な藤原俊頼(1055-1129)の書と伝えられてきましたが、
現在では藤原行成の曾孫の藤原定実とされています。
巻子本古今和歌集と呼ばれる20巻のうち、巻子の形で現存しているのは
この巻だけで、他は断簡が散在しています。


展示室6のテーマは「北宋工芸」です。

「青磁牡丹文水注・承盤」 北宋時代 11世紀 個人蔵(根津美術館寄託)
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酒の容器で、お湯で温めるための承盤が付いています。
青磁は宋時代に特に盛んに作られました。

「白地石畳唐草文壺」 磁州窯系 北宋時代 11世紀
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白土を掛け、搔き取って唐草文や石畳文を表して、華やかです。
磁州窯は華北一帯で陶器を生産した民窯の総称です。

あちこちの美術館や寺院などの所蔵品も揃えた、力の入った展覧会です。

展覧会のHPです。


次回の展覧会は企画展「繍と織 華麗なる日本染織の世界」です。
会期は12月16日(土)から2024年1月28日(日)までです。

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【2023/11/10 19:35】 美術館・博物館 | トラックバック(0) | コメント(0) |
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