上野
上野の東京都美術館では、「ボルゲーゼ美術館展」が開かれています。
期間は4月4日までです。
東京都美術館はこの展覧会の後、改修のため2年間、閉館されます。

展覧会では、イタリアの名門ボルゲーゼ家の収集した、ルネサンスから
バロックの作品約50点が展示されています。
展示は3階に分かれています。
1階は、「15世紀・ルネサンスの輝き」というタイトルです。
10番 サンドロ・ボッティチェルリとその弟子たち
「聖母子、洗礼者ヨハネと天使」 1488年頃

今回の展示の中で最も古い作品で、テンペラで描かれています。
聖母マリアや天使たちの衣装には金襴が施され、天使たちはそれぞれ豪華な
衣装を着け、花飾りを被ったりして、少女漫画のような甘美さがあります。
後ろに飾ってある、聖母マリアを象徴するバラは、「ヴィーナスの誕生」で
撒かれているバラを思わせます。
後の時代と比べての、ルネサンスの大らかさを感じます。
11番 ラファエロ・サンツィオ 「一角獣を抱く貴婦人」 1506年頃

初めて観た時の印象は、何と明るい色彩の作品だろうということです。
肌は白く輝き、金色の髪の毛は一本一本ていねいに描き込まれています。
画面上側の水色の空と水色の眼に対して、下側の袖の紅色とネックレスの
紅色が見事な対比を見せています。
外の風景も広々として、穏やかです。
ルネサンスとはこのように伸びやかで、明快なものだったのかと思います。
以前は、車輪の破片を持った図柄だったので、聖カタリナを描いたとされて
いたそうです。
不自然な点があるので、上描きされた部分を取り除いたところ、一角獣を
抱いた姿が現われたとのことです。
一角獣は貞節の象徴なので、モデルが誰かは不明ですが、結婚を記念して
描かれたのだろうということです。
15番 レオナルド・ダ・ヴィンチ(模写) 「レダ」 16世紀

今は失われた、レオナルドのオリジナル作品を最も良く伝えていると
云われています。
ギリシャ神話の、ゼウスが美しいレダを誘惑しようと、白鳥に身を変えて
近づいたという話です。
レダと白鳥の体の線がS字型になって調和しています。
レオナルドらしく、レダの表情はどこか謎めいています。
足元の鳥や草花は長谷川潔の版画によく似ていると思いました。
2階は、「16世紀・ルネサンスの実り-百花繚乱の時代」ということで、
ルネサンスからマニエリスムの時代です。
30番 ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ
「レダ」 1560-70年頃

小品ですが、こちらもレダです。
濃密な作品で、レダの凝った髪型や豪華な衣装など、細かく描き込んでいます。
解説によると、人体を解剖学的にも正確に写すことが、マニエリスムの一つの
特徴ということで、この絵も首筋の筋肉の小さな動きまで描かれています。
ギルランダイオは、3代居て、初代はドメニコ・ギルランダイオ、
2代目はリドルフォ・デル・ギルランダイオ、
3代目はミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオということで、
ややこしいです。
2代目の作品も小品ですが、「12番 『若者の肖像』 16世紀初頭」という、
端正な作品が展示されています。
21番 ヴェロネーゼ 「魚に説教する聖アントニオ」 1580年頃

聖アントニオは13世紀のポルトガルの聖人で、この絵は、海辺で説教すると
魚が集まって来て、説教を聴いたという言い伝えを描いています。
ジョットの描いた、アッシジの聖フランチェスコの、「小鳥への説教」を
思い出す話です。
ジョットの絵が淡々としているのに対して、こちらは動的です。
右下の人物たちは崖の上に立つ聖アントニオを見上げ、聖アントニオは体を傾け、
手を伸ばして左を指しています。
左下の海では、魚たちが口を開けて集まっています。
聖アントニオの姿は遠近法を無視した大きさで描かれています。
広々とした青い空の下のドラマです。
3階は、17世紀・新たな表現に向けて-カラヴァッジョの時代」ということで、
バロックの時代です。
40番 カラヴァッジョ 「洗礼者ヨハネ」 1609-10年

光と闇の対比を追及したカラヴァッジョの、若い最晩年の作品です。
光に当たったヨハネの体は、広げた赤い布によって更に際立っています。
物憂げな表情は何を意味しているのでしょうか。
殺人を犯して、長い逃亡生活を続けていたカラヴァッジョの自画像の
ようにも見えます。
45番 ジュゼッペ(フセペ)・デ・リベーラ 「物乞い」 1617-20年頃

ジュゼッペ・デ・リベーラはスペイン出身で、カラヴァッジョの影響を
強く受けているということです。
光を浴びて闇の中に浮かび上がる姿は、まさしくカラヴァッジョの手法を
思わせます。
弟子のルカ・ジョルダーノの作品にも同じように、物乞いを正面から
描いたものがあります。
アルキータ・リッチ 「支倉常長像」 1615年

特別出品で、1階に展示されています。
伊達政宗の命でローマに派遣された支倉常長の像です。
刀の柄が少し短いですが、豪華な羽織袴のススキの模様など、
違和感無く、忠実に描かれています。
支倉常長の一世一代の晴れ姿なのでしょう。
ローマ滞在中にボルゲーゼ邸でもてなしを受けたとのことです。
ここで支倉常長に会うとは予想していませんでした。
時代はこの後、昨年観た、「ルーヴル美術館展」の時代に続きます。
chariot
上野の東京都美術館では、「ボルゲーゼ美術館展」が開かれています。
期間は4月4日までです。
東京都美術館はこの展覧会の後、改修のため2年間、閉館されます。

展覧会では、イタリアの名門ボルゲーゼ家の収集した、ルネサンスから
バロックの作品約50点が展示されています。
展示は3階に分かれています。
1階は、「15世紀・ルネサンスの輝き」というタイトルです。
10番 サンドロ・ボッティチェルリとその弟子たち
「聖母子、洗礼者ヨハネと天使」 1488年頃

今回の展示の中で最も古い作品で、テンペラで描かれています。
聖母マリアや天使たちの衣装には金襴が施され、天使たちはそれぞれ豪華な
衣装を着け、花飾りを被ったりして、少女漫画のような甘美さがあります。
後ろに飾ってある、聖母マリアを象徴するバラは、「ヴィーナスの誕生」で
撒かれているバラを思わせます。
後の時代と比べての、ルネサンスの大らかさを感じます。
11番 ラファエロ・サンツィオ 「一角獣を抱く貴婦人」 1506年頃

初めて観た時の印象は、何と明るい色彩の作品だろうということです。
肌は白く輝き、金色の髪の毛は一本一本ていねいに描き込まれています。
画面上側の水色の空と水色の眼に対して、下側の袖の紅色とネックレスの
紅色が見事な対比を見せています。
外の風景も広々として、穏やかです。
ルネサンスとはこのように伸びやかで、明快なものだったのかと思います。
以前は、車輪の破片を持った図柄だったので、聖カタリナを描いたとされて
いたそうです。
不自然な点があるので、上描きされた部分を取り除いたところ、一角獣を
抱いた姿が現われたとのことです。
一角獣は貞節の象徴なので、モデルが誰かは不明ですが、結婚を記念して
描かれたのだろうということです。
15番 レオナルド・ダ・ヴィンチ(模写) 「レダ」 16世紀

今は失われた、レオナルドのオリジナル作品を最も良く伝えていると
云われています。
ギリシャ神話の、ゼウスが美しいレダを誘惑しようと、白鳥に身を変えて
近づいたという話です。
レダと白鳥の体の線がS字型になって調和しています。
レオナルドらしく、レダの表情はどこか謎めいています。
足元の鳥や草花は長谷川潔の版画によく似ていると思いました。
2階は、「16世紀・ルネサンスの実り-百花繚乱の時代」ということで、
ルネサンスからマニエリスムの時代です。
30番 ミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオ
「レダ」 1560-70年頃

小品ですが、こちらもレダです。
濃密な作品で、レダの凝った髪型や豪華な衣装など、細かく描き込んでいます。
解説によると、人体を解剖学的にも正確に写すことが、マニエリスムの一つの
特徴ということで、この絵も首筋の筋肉の小さな動きまで描かれています。
ギルランダイオは、3代居て、初代はドメニコ・ギルランダイオ、
2代目はリドルフォ・デル・ギルランダイオ、
3代目はミケーレ・ディ・リドルフォ・デル・ギルランダイオということで、
ややこしいです。
2代目の作品も小品ですが、「12番 『若者の肖像』 16世紀初頭」という、
端正な作品が展示されています。
21番 ヴェロネーゼ 「魚に説教する聖アントニオ」 1580年頃

聖アントニオは13世紀のポルトガルの聖人で、この絵は、海辺で説教すると
魚が集まって来て、説教を聴いたという言い伝えを描いています。
ジョットの描いた、アッシジの聖フランチェスコの、「小鳥への説教」を
思い出す話です。
ジョットの絵が淡々としているのに対して、こちらは動的です。
右下の人物たちは崖の上に立つ聖アントニオを見上げ、聖アントニオは体を傾け、
手を伸ばして左を指しています。
左下の海では、魚たちが口を開けて集まっています。
聖アントニオの姿は遠近法を無視した大きさで描かれています。
広々とした青い空の下のドラマです。
3階は、17世紀・新たな表現に向けて-カラヴァッジョの時代」ということで、
バロックの時代です。
40番 カラヴァッジョ 「洗礼者ヨハネ」 1609-10年

光と闇の対比を追及したカラヴァッジョの、若い最晩年の作品です。
光に当たったヨハネの体は、広げた赤い布によって更に際立っています。
物憂げな表情は何を意味しているのでしょうか。
殺人を犯して、長い逃亡生活を続けていたカラヴァッジョの自画像の
ようにも見えます。
45番 ジュゼッペ(フセペ)・デ・リベーラ 「物乞い」 1617-20年頃

ジュゼッペ・デ・リベーラはスペイン出身で、カラヴァッジョの影響を
強く受けているということです。
光を浴びて闇の中に浮かび上がる姿は、まさしくカラヴァッジョの手法を
思わせます。
弟子のルカ・ジョルダーノの作品にも同じように、物乞いを正面から
描いたものがあります。
アルキータ・リッチ 「支倉常長像」 1615年

特別出品で、1階に展示されています。
伊達政宗の命でローマに派遣された支倉常長の像です。
刀の柄が少し短いですが、豪華な羽織袴のススキの模様など、
違和感無く、忠実に描かれています。
支倉常長の一世一代の晴れ姿なのでしょう。
ローマ滞在中にボルゲーゼ邸でもてなしを受けたとのことです。
ここで支倉常長に会うとは予想していませんでした。
時代はこの後、昨年観た、「ルーヴル美術館展」の時代に続きます。
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blog_name=【【徒然なるままに・・・】】 ♥ 『ボルゲーゼ美術館展』
1/16から4/4まで、東京・上野の東京都美術館で開催中。
この展示のあと、東京都美術館はリニューアル工事の為2年間閉鎖されてしまうので、今がチャンス(何の?)かも知れません。
展覧会自体は、昨年の秋から年末にかけて京都でも開催されていたそうなので、そちら
【2010/05/09 15:12】
【2010/05/09 15:12】
blog_name=【弐代目・青い日記帳 】 ♥ 「ボルゲーゼ美術館展」
東京都美術館で開催中の
「ボルゲーゼ美術館展」のプレス内覧会にお邪魔して来ました。
ボルゲーゼ美術館展公式サイト
ローマにはアムステルダムと同じ位よく行っていますが、ローマ市北東部ピンチアーナ門の北側に広がるボルゲーゼ公園内にある、このボルゲーゼ...
【2010/01/23 23:55】
【2010/01/23 23:55】