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東京都庭園美術館 マッキアイオーリ展
目黒・白金台
chariot

目黒の東京都庭園美術館で、3月14日まで開かれている
「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」に行ってきました。

マッキ 0034


マ1-23-2010_001


「マッキアイオーリ」とはイタリア語で「マッキア派の画家たち」という意味で
マッキアとは、色の斑点で対象の明暗を捉える技法を指すとのことです。

イタリア統一運動が盛んになった1850年代に、時代に触発されてフィレンツェで
始まった芸術運動で、フランスの印象派よりやや早く、当時のアカデミズムに
対抗した新しい絵画を目指したとのことです。

ルネサンス時代に下図に使われていたマッキアの技法を、表に出したままで
作品を完成させたのが大きな特徴ということで、印象派の荒い筆致で描く
技法の話と似ています。

また、パンフレットに、"Italian Masters of Realism"とあるように、
その基本はリアリズムにあるとのことです。

パンフレットには、マッキアイオーリについての解説が書かれていて、
参考になります。

この展覧会にはイタリア本国の協力で、約60点の油彩作品が展示されています。

テレマコ・シニョリーニ 
「フランスのズアーヴ兵とトスカーナの大砲のルビエラ入城」 1860年頃


マ1-22-2010_004

イタリア統一運動の初期にはフランスに援軍を頼んで、オーストリア軍を
北イタリアから追い出しています。


テレマコ・シニョリーニ 「セッティニャーノの行進」 1880年頃

マ1-22-2010_011

セッティニャーノはフィレンチェ郊外の町で、シニョリーニはここに
住んで作品を描いています。
明るい日差しの中のお祭りの行進です。


テレマコ・シニョリーニ 「セッティニャーノの菜園」

マ1-22-2010_010

日陰になった庭はいかにも涼しそうです。
穏やかな緑色の景色の中に赤色を置いています。
シニョリーニの作品は、風景への親密さに満ちています。


テレマコ・シニョリーニ 「8月末のピエトラマーラ」 1889年

手前には塀に囲まれた緑の庭があり、遠くには日に当たって黄土色の丘が
広がっています。
塀の上では、犬が一匹、気だるそうに景色を眺めています。
シニョリーニの絵には、塀と点景のような人物や動物といった構図が
よくあります。
画像が展覧会のHPに載っています。


シルヴェストロ・レーガ 「ジュゼッペ・ガリバルディの肖像」

マ1-22-2010_005

赤シャツ隊を率いて、イタリア統一運動を指導したガリバルディの肖像です。
威厳に満ち、憂いも見える表情です。
シャツは袖がゆるやかで、胸ポケットがつき、なかなかお洒落です。
レーガは人物像をよく描いています。


シルヴェストロ・レーガ 「庭園での散歩」

マ1-23-2010_002

日の光の差す公園での状景です。
描き方が印象派によく似ていることが分かります。


シルヴェストロ・レーガ 「乳母を訪ねる」 1873年

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子供を抱いた乳母と、お供の女性の質素な服装に対して、真中の女性の
上等の服が際立ちます。
貧富の差の大きい階級社会イタリアの状況を描き出しています。


シルヴェストロ・レーガ 「母親」 1884年

マ1-22-2010_012

大きな作品で、階段を上がった2階ホールの正面に掲げられています。
落書きに夢中な子供は、母親の服を踏んでいることに気が付きません。
母親の水色の服と、毛糸のピンクが対照的です。


ジョヴァンニ・ファットーリ 「森の中の農民の娘」 1861年

マ1-22-2010_009

ふと佇んでいる女性を描いているようですが、解説によると聖母マリア像を
ヒントにしているそうです。
ファットーリは農村の日常の状景を描いています。
同じく農村を描いた、フランスのコローと同時代なので、比べてみると
面白いです。


クリスティアーノ・バンティ 「農民の女性たちの集い」 1861年

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何気ない農村の日常と風景を、夕方の光の中で捉えています。


アドルフォ・トンマージ 「田園詩 『逢瀬』」 1884年

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穏やかな田園風景の中の人間の営みを掬い取っています。
人物も遠くにいるので、風景に溶け込んでいます。


フランチェスコ・ジョーリ 「水運びの娘」 1891年

マ1-22-2010_002

画像では上下が少し切れています。
女性は日陰になり、平野と丘は日に照らされています。
平野の部分の、大まかな色の付け方に特徴があります。
スカーフが揺れて、吹き上がってくる風を感じます。
その立ち姿は堂々として、ギリシャ・ローマ建築の、女性の形をした石柱
(カリアティード)のようです。


イタリア絵画というと、バロック時代までは分かるのですが、その後は
あまり馴染みがありません。
今回の展覧会も、初めて観る画家ばかりでした。
今では、絵画というと先ずフランスが思い浮かびます。
文化の中心がフランスに移ったためで、統一国家の成立の早かったフランスと、
分裂状態の長かったイタリアの差が出てしまったようです。
そのイタリアで、フランスの印象派より早く、このような大きな芸術運動が
あったことを知って、とても良い勉強になりました。

作品にはそれぞれ解説が付いているので、作品を観る、解説を読む、
アールデコの館内を眺める、と中身の濃い鑑賞でした。
晴れた日には、2階のサンルームでの休憩を特にお奨めします。

美術館の入口で東京都のアンケートに答えた時に、庭園美術館の絵葉書を
いただきました。


マ1-24-2010_001

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【2010/01/26 19:45】 美術館・博物館 | トラックバック(2) | コメント(2) |
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  • はろるどさん、こんばんは。
  • コメントとTB、有難うございます。

    レーガは人物の心や表情を描くのが上手い人ですね。

    私は、シニョリーニの、日に照らされた壁と人物や犬が小さく描かれた、少し気だるい風景画が気に入りました。

    一つ一つの部屋は大きくないので、混むかも知れませんね。

    【2010/01/27 23:09】 url[猫アリーナ chariot #/8nqih4Y] [ 編集]
  • こんばんは。確かにフランスよりも早い潮流だったのですよね。知名度こそ低いですが、とても興味深いグループだと思いました。

    輝かしい光に満ちた風景画も良かったのですが、今回は肖像、特にレーガの作品にとても惹かれました。ジョーリの後姿も大胆でしたね。

    出来ればまた訪れたいです。(結構混んでいるそうですね。)

    【2010/01/27 21:37】 url[はろるど #l5HLehIY] [ 編集]
    please comment















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