目黒・白金台
目黒の東京都庭園美術館で、3月14日まで開かれている
「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」に行ってきました。


「マッキアイオーリ」とはイタリア語で「マッキア派の画家たち」という意味で
マッキアとは、色の斑点で対象の明暗を捉える技法を指すとのことです。
イタリア統一運動が盛んになった1850年代に、時代に触発されてフィレンツェで
始まった芸術運動で、フランスの印象派よりやや早く、当時のアカデミズムに
対抗した新しい絵画を目指したとのことです。
ルネサンス時代に下図に使われていたマッキアの技法を、表に出したままで
作品を完成させたのが大きな特徴ということで、印象派の荒い筆致で描く
技法の話と似ています。
また、パンフレットに、"Italian Masters of Realism"とあるように、
その基本はリアリズムにあるとのことです。
パンフレットには、マッキアイオーリについての解説が書かれていて、
参考になります。
この展覧会にはイタリア本国の協力で、約60点の油彩作品が展示されています。
テレマコ・シニョリーニ
「フランスのズアーヴ兵とトスカーナの大砲のルビエラ入城」 1860年頃

イタリア統一運動の初期にはフランスに援軍を頼んで、オーストリア軍を
北イタリアから追い出しています。
テレマコ・シニョリーニ 「セッティニャーノの行進」 1880年頃

セッティニャーノはフィレンチェ郊外の町で、シニョリーニはここに
住んで作品を描いています。
明るい日差しの中のお祭りの行進です。
テレマコ・シニョリーニ 「セッティニャーノの菜園」

日陰になった庭はいかにも涼しそうです。
穏やかな緑色の景色の中に赤色を置いています。
シニョリーニの作品は、風景への親密さに満ちています。
テレマコ・シニョリーニ 「8月末のピエトラマーラ」 1889年
手前には塀に囲まれた緑の庭があり、遠くには日に当たって黄土色の丘が
広がっています。
塀の上では、犬が一匹、気だるそうに景色を眺めています。
シニョリーニの絵には、塀と点景のような人物や動物といった構図が
よくあります。
画像が展覧会のHPに載っています。
シルヴェストロ・レーガ 「ジュゼッペ・ガリバルディの肖像」

赤シャツ隊を率いて、イタリア統一運動を指導したガリバルディの肖像です。
威厳に満ち、憂いも見える表情です。
シャツは袖がゆるやかで、胸ポケットがつき、なかなかお洒落です。
レーガは人物像をよく描いています。
シルヴェストロ・レーガ 「庭園での散歩」

日の光の差す公園での状景です。
描き方が印象派によく似ていることが分かります。
シルヴェストロ・レーガ 「乳母を訪ねる」 1873年

子供を抱いた乳母と、お供の女性の質素な服装に対して、真中の女性の
上等の服が際立ちます。
貧富の差の大きい階級社会イタリアの状況を描き出しています。
シルヴェストロ・レーガ 「母親」 1884年

大きな作品で、階段を上がった2階ホールの正面に掲げられています。
落書きに夢中な子供は、母親の服を踏んでいることに気が付きません。
母親の水色の服と、毛糸のピンクが対照的です。
ジョヴァンニ・ファットーリ 「森の中の農民の娘」 1861年

ふと佇んでいる女性を描いているようですが、解説によると聖母マリア像を
ヒントにしているそうです。
ファットーリは農村の日常の状景を描いています。
同じく農村を描いた、フランスのコローと同時代なので、比べてみると
面白いです。
クリスティアーノ・バンティ 「農民の女性たちの集い」 1861年

何気ない農村の日常と風景を、夕方の光の中で捉えています。
アドルフォ・トンマージ 「田園詩 『逢瀬』」 1884年

穏やかな田園風景の中の人間の営みを掬い取っています。
人物も遠くにいるので、風景に溶け込んでいます。
フランチェスコ・ジョーリ 「水運びの娘」 1891年

画像では上下が少し切れています。
女性は日陰になり、平野と丘は日に照らされています。
平野の部分の、大まかな色の付け方に特徴があります。
スカーフが揺れて、吹き上がってくる風を感じます。
その立ち姿は堂々として、ギリシャ・ローマ建築の、女性の形をした石柱
(カリアティード)のようです。
イタリア絵画というと、バロック時代までは分かるのですが、その後は
あまり馴染みがありません。
今回の展覧会も、初めて観る画家ばかりでした。
今では、絵画というと先ずフランスが思い浮かびます。
文化の中心がフランスに移ったためで、統一国家の成立の早かったフランスと、
分裂状態の長かったイタリアの差が出てしまったようです。
そのイタリアで、フランスの印象派より早く、このような大きな芸術運動が
あったことを知って、とても良い勉強になりました。
作品にはそれぞれ解説が付いているので、作品を観る、解説を読む、
アールデコの館内を眺める、と中身の濃い鑑賞でした。
晴れた日には、2階のサンルームでの休憩を特にお奨めします。
美術館の入口で東京都のアンケートに答えた時に、庭園美術館の絵葉書を
いただきました。

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目黒の東京都庭園美術館で、3月14日まで開かれている
「イタリアの印象派 マッキアイオーリ展」に行ってきました。


「マッキアイオーリ」とはイタリア語で「マッキア派の画家たち」という意味で
マッキアとは、色の斑点で対象の明暗を捉える技法を指すとのことです。
イタリア統一運動が盛んになった1850年代に、時代に触発されてフィレンツェで
始まった芸術運動で、フランスの印象派よりやや早く、当時のアカデミズムに
対抗した新しい絵画を目指したとのことです。
ルネサンス時代に下図に使われていたマッキアの技法を、表に出したままで
作品を完成させたのが大きな特徴ということで、印象派の荒い筆致で描く
技法の話と似ています。
また、パンフレットに、"Italian Masters of Realism"とあるように、
その基本はリアリズムにあるとのことです。
パンフレットには、マッキアイオーリについての解説が書かれていて、
参考になります。
この展覧会にはイタリア本国の協力で、約60点の油彩作品が展示されています。
テレマコ・シニョリーニ
「フランスのズアーヴ兵とトスカーナの大砲のルビエラ入城」 1860年頃

イタリア統一運動の初期にはフランスに援軍を頼んで、オーストリア軍を
北イタリアから追い出しています。
テレマコ・シニョリーニ 「セッティニャーノの行進」 1880年頃

セッティニャーノはフィレンチェ郊外の町で、シニョリーニはここに
住んで作品を描いています。
明るい日差しの中のお祭りの行進です。
テレマコ・シニョリーニ 「セッティニャーノの菜園」

日陰になった庭はいかにも涼しそうです。
穏やかな緑色の景色の中に赤色を置いています。
シニョリーニの作品は、風景への親密さに満ちています。
テレマコ・シニョリーニ 「8月末のピエトラマーラ」 1889年
手前には塀に囲まれた緑の庭があり、遠くには日に当たって黄土色の丘が
広がっています。
塀の上では、犬が一匹、気だるそうに景色を眺めています。
シニョリーニの絵には、塀と点景のような人物や動物といった構図が
よくあります。
画像が展覧会のHPに載っています。
シルヴェストロ・レーガ 「ジュゼッペ・ガリバルディの肖像」

赤シャツ隊を率いて、イタリア統一運動を指導したガリバルディの肖像です。
威厳に満ち、憂いも見える表情です。
シャツは袖がゆるやかで、胸ポケットがつき、なかなかお洒落です。
レーガは人物像をよく描いています。
シルヴェストロ・レーガ 「庭園での散歩」

日の光の差す公園での状景です。
描き方が印象派によく似ていることが分かります。
シルヴェストロ・レーガ 「乳母を訪ねる」 1873年

子供を抱いた乳母と、お供の女性の質素な服装に対して、真中の女性の
上等の服が際立ちます。
貧富の差の大きい階級社会イタリアの状況を描き出しています。
シルヴェストロ・レーガ 「母親」 1884年

大きな作品で、階段を上がった2階ホールの正面に掲げられています。
落書きに夢中な子供は、母親の服を踏んでいることに気が付きません。
母親の水色の服と、毛糸のピンクが対照的です。
ジョヴァンニ・ファットーリ 「森の中の農民の娘」 1861年

ふと佇んでいる女性を描いているようですが、解説によると聖母マリア像を
ヒントにしているそうです。
ファットーリは農村の日常の状景を描いています。
同じく農村を描いた、フランスのコローと同時代なので、比べてみると
面白いです。
クリスティアーノ・バンティ 「農民の女性たちの集い」 1861年

何気ない農村の日常と風景を、夕方の光の中で捉えています。
アドルフォ・トンマージ 「田園詩 『逢瀬』」 1884年

穏やかな田園風景の中の人間の営みを掬い取っています。
人物も遠くにいるので、風景に溶け込んでいます。
フランチェスコ・ジョーリ 「水運びの娘」 1891年

画像では上下が少し切れています。
女性は日陰になり、平野と丘は日に照らされています。
平野の部分の、大まかな色の付け方に特徴があります。
スカーフが揺れて、吹き上がってくる風を感じます。
その立ち姿は堂々として、ギリシャ・ローマ建築の、女性の形をした石柱
(カリアティード)のようです。
イタリア絵画というと、バロック時代までは分かるのですが、その後は
あまり馴染みがありません。
今回の展覧会も、初めて観る画家ばかりでした。
今では、絵画というと先ずフランスが思い浮かびます。
文化の中心がフランスに移ったためで、統一国家の成立の早かったフランスと、
分裂状態の長かったイタリアの差が出てしまったようです。
そのイタリアで、フランスの印象派より早く、このような大きな芸術運動が
あったことを知って、とても良い勉強になりました。
作品にはそれぞれ解説が付いているので、作品を観る、解説を読む、
アールデコの館内を眺める、と中身の濃い鑑賞でした。
晴れた日には、2階のサンルームでの休憩を特にお奨めします。
美術館の入口で東京都のアンケートに答えた時に、庭園美術館の絵葉書を
いただきました。

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こんばんは。確かにフランスよりも早い潮流だったのですよね。知名度こそ低いですが、とても興味深いグループだと思いました。
輝かしい光に満ちた風景画も良かったのですが、今回は肖像、特にレーガの作品にとても惹かれました。ジョーリの後姿も大胆でしたね。
出来ればまた訪れたいです。(結構混んでいるそうですね。)
輝かしい光に満ちた風景画も良かったのですが、今回は肖像、特にレーガの作品にとても惹かれました。ジョーリの後姿も大胆でしたね。
出来ればまた訪れたいです。(結構混んでいるそうですね。)
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東京都庭園美術館で開催中の
「イタリアの印象派 マッキアイオーリ~光を描いた近代画家たち」展に行って来ました。
「マッキアイオーリ」(macchiaioli)この耳慣れない言葉を初めて知ったのは昨年の6月。イタリア大使館で行われた「日本におけるイタリア2009・秋
【2010/01/28 20:09】
【2010/01/28 20:09】
blog_name=【はろるど・わーど】 ♥ 「イタリアの印象派 - マッキアイオーリ」 東京都庭園美術館
東京都庭園美術館(港区白金台5-21-9)
「イタリアの印象派 - マッキアイオーリ 光を描いた近代画家たち」
1/16-3/14
東京都庭園美術館で開催中の「イタリアの印象派 - マッキアイオーリ 光を描いた近代画家たち」のプレスプレビューに参加してきました。
庭園美
【2010/01/27 21:40】
【2010/01/27 21:40】
レーガは人物の心や表情を描くのが上手い人ですね。
私は、シニョリーニの、日に照らされた壁と人物や犬が小さく描かれた、少し気だるい風景画が気に入りました。
一つ一つの部屋は大きくないので、混むかも知れませんね。