恵比寿
山種美術館では、新美術館開館記念特別展IIIとして、3月28日まで、
「大観と栖鳳-東西の日本画-」展が開かれています。

横山大観(1868~1958)と竹内栖鳳(1864~1942)という、東西の近代日本画を
代表する二人と、その周辺の画家合わせて24名、56点の作品を展示していますが、
印象に残った作品の内の何点かについて書いてみます。
東京画壇
横山大観 「作右衛門の家」 1916年 4曲1隻

木々の生い茂る中を、男が馬に食べさせる草を担いで帰って来るところです。
厩では馬が嬉しそうに足掻いています。
桐の木は大きな葉を付け、栗の木には青い実が生っています。
自然と人事が一体となった理想郷です。
横山大観 「木兎」 1926年

森の中のミミズクです。
深々とした木立は墨の濃淡で表され、目にだけ色が入っています。
横山大観は動物好きだったそうで、この絵にも温かい眼差しが感じられます。
横山大観 「楚水の巻」 1910年
横山大観 「燕山の巻」 1910年
共に、中国に取材した、後の「生々流転」を想わせる、長大な墨絵の巻物です。
現地の風物が伸びやかに描かれています。
前田青邨 「異装行列の信長」 1969年

舅の斎藤道三との対面に臨む、若き日の織田信長の一行の姿です。
信長は、虎皮と豹皮の袴を着け、腰に瓢箪や火打石を括り付けた異形の姿で
会見場の美濃の正徳寺に乗り込んだといいます。
背景を小姓たちの顔と、足軽の陣笠で埋め尽くし、皆が同じ方向を向いた画面は
力に満ち、緊迫感があります。
様式性と写実性が一体となり、信長が歴史に踊り出してきた瞬間を見事に捉えた
力作で、前田青邨84歳の作です。
東京画壇では他に、下村観山の「老松白藤」、安田靫彦の「平泉の義経」、
川端龍子の「鳴門」などが展示されています。
京都画壇
竹内栖鳳 「班猫」 1924年 重要文化財

竹内栖鳳の代表作です。
沼津の八百屋さんの飼い猫が、宋の徽宗(きそう)皇帝の描いた猫と
同じ柄なので、貰い受けて京都に連れて帰り、描いた作品です。
徽宗皇帝の猫の絵は、目を見開いて前足を舐めている姿ですが、
こちらは背中を毛繕いしながら、こちらを見上げた瞬間を捉えています。
細かい筆遣いで柔らかい毛並みの柔らかさまで表現され、瞳孔の細く
なった緑色の目が印象的です。
「班猫」は普通、「斑猫」と書くところですが、竹内栖鳳の箱書きには
「班猫」となっているそうです。
竹内栖鳳 「緑池」 1927年

一匹の蛙が池から顔を出しています。
いかにも暖かそうな春の情景です。
竹内栖鳳 「艶陽」 1940年
花の咲いたえんどう豆に蛇が絡み付いています。
春の情景に蛇を選ぶのは、西洋画では考えられない美意識です。
上村松園 「牡丹雪」 1944年

雪の積もった傘を傾けて、二人の町娘が歩いています。
一人は、袂で傘の柄をくるむ様にして持ち、前かがみになって、
片手で裾を持ち上げ、もう一人は御高祖頭巾を被っています。
清らかで、凛とした風情が、雪によって引き立ちます。
京都画壇では他に、村上華岳の「裸婦図」、土田麦僊の「大原女」などが
展示されています。
それぞれの画家の作品を、東か西か意識して鑑賞してみるのも面白い趣向です。
特に、竹内栖鳳、上村松園、村上華岳、土田麦僊、小野竹喬には、柔らかな
筆遣いや色彩に京都らしさを感じます。
展覧会のHPです。
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山種美術館では、新美術館開館記念特別展IIIとして、3月28日まで、
「大観と栖鳳-東西の日本画-」展が開かれています。

横山大観(1868~1958)と竹内栖鳳(1864~1942)という、東西の近代日本画を
代表する二人と、その周辺の画家合わせて24名、56点の作品を展示していますが、
印象に残った作品の内の何点かについて書いてみます。
東京画壇
横山大観 「作右衛門の家」 1916年 4曲1隻

木々の生い茂る中を、男が馬に食べさせる草を担いで帰って来るところです。
厩では馬が嬉しそうに足掻いています。
桐の木は大きな葉を付け、栗の木には青い実が生っています。
自然と人事が一体となった理想郷です。
横山大観 「木兎」 1926年

森の中のミミズクです。
深々とした木立は墨の濃淡で表され、目にだけ色が入っています。
横山大観は動物好きだったそうで、この絵にも温かい眼差しが感じられます。
横山大観 「楚水の巻」 1910年
横山大観 「燕山の巻」 1910年
共に、中国に取材した、後の「生々流転」を想わせる、長大な墨絵の巻物です。
現地の風物が伸びやかに描かれています。
前田青邨 「異装行列の信長」 1969年

舅の斎藤道三との対面に臨む、若き日の織田信長の一行の姿です。
信長は、虎皮と豹皮の袴を着け、腰に瓢箪や火打石を括り付けた異形の姿で
会見場の美濃の正徳寺に乗り込んだといいます。
背景を小姓たちの顔と、足軽の陣笠で埋め尽くし、皆が同じ方向を向いた画面は
力に満ち、緊迫感があります。
様式性と写実性が一体となり、信長が歴史に踊り出してきた瞬間を見事に捉えた
力作で、前田青邨84歳の作です。
東京画壇では他に、下村観山の「老松白藤」、安田靫彦の「平泉の義経」、
川端龍子の「鳴門」などが展示されています。
京都画壇
竹内栖鳳 「班猫」 1924年 重要文化財

竹内栖鳳の代表作です。
沼津の八百屋さんの飼い猫が、宋の徽宗(きそう)皇帝の描いた猫と
同じ柄なので、貰い受けて京都に連れて帰り、描いた作品です。
徽宗皇帝の猫の絵は、目を見開いて前足を舐めている姿ですが、
こちらは背中を毛繕いしながら、こちらを見上げた瞬間を捉えています。
細かい筆遣いで柔らかい毛並みの柔らかさまで表現され、瞳孔の細く
なった緑色の目が印象的です。
「班猫」は普通、「斑猫」と書くところですが、竹内栖鳳の箱書きには
「班猫」となっているそうです。
竹内栖鳳 「緑池」 1927年

一匹の蛙が池から顔を出しています。
いかにも暖かそうな春の情景です。
竹内栖鳳 「艶陽」 1940年
花の咲いたえんどう豆に蛇が絡み付いています。
春の情景に蛇を選ぶのは、西洋画では考えられない美意識です。
上村松園 「牡丹雪」 1944年

雪の積もった傘を傾けて、二人の町娘が歩いています。
一人は、袂で傘の柄をくるむ様にして持ち、前かがみになって、
片手で裾を持ち上げ、もう一人は御高祖頭巾を被っています。
清らかで、凛とした風情が、雪によって引き立ちます。
京都画壇では他に、村上華岳の「裸婦図」、土田麦僊の「大原女」などが
展示されています。
それぞれの画家の作品を、東か西か意識して鑑賞してみるのも面白い趣向です。
特に、竹内栖鳳、上村松園、村上華岳、土田麦僊、小野竹喬には、柔らかな
筆遣いや色彩に京都らしさを感じます。
展覧会のHPです。
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