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「マイセン磁器の300年」展 サントリー美術館
六本木・乃木坂
chariot

六本木のサントリー美術館では、「マイセン磁器の300年」展が開かれています。
正式な題名は「日独交流150周年記念・国立マイセン磁器美術館所蔵
マイセン磁器の300年 壮大なる創造と進化」展です。
会期は3月6日(日)までです。

マ001


1710年の王立磁器製作所設立以来、現在までのマイセン磁器約150点が
展示されています。

展示は以下の5章に分かれています。

第1章 西洋磁器の創成期
第2章 王の夢、貴族の雅
第3章 市民階級の台頭と万国博覧会
第4章 モダニズムの時代、アール・ヌーヴォー、アール・デコ
第5章 創造の未来へ

第1章 西洋磁器の創成期

ドイツのザクセン選帝候フリードリッヒ・アウグスト1世(1670-1733、
「アウグスト強王」)が当時は西洋に無かった本格的な磁器の開発を命じます。
1710年にヨーロッパ最初の硬質磁器窯が開かれます。

景徳鎮の磁器や有田焼がヨーロッパに輸入されていたので、まず「シノワズリ」
(中国趣味)などの東洋的な雰囲気の作品が多く作られます。

「インド文様花卉文蓋付壺」 原型:1725年頃 製造:1730-1735年頃
マ003

インド文様とは東インド会社がもたらした製品の文様であることから付いた名です。
中国風の花の図柄です。

『「玉葱文様」(通称「ブルー・オニオン」)皿』 
 原型:1730年頃 製造:1730-1740年頃

マ009

染付で、マイセンを代表し、現在も盛んに使われている絵柄です。
口縁にある中国の吉祥文のザクロの絵柄がヨーロッパ人にはタマネギに
見えたことから、この名が付きました。
ただし、人気が出たのは19世紀になってからとのことです。

「スノーボール貼花装飾ティー・ポット」 
 原型:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラーに帰属 18世紀中頃 製造:18世紀中頃

マ002

スノーボールはセイヨウカンボク、テマリカンボクと呼ばれ、白い小さな花を
たくさん咲かせます。
小さな花弁を一面に貼り付けるという手の込んだ細工をしています。
木の枝葉の金泥と白が調和して上品ですが、手入れは大変そうです。
ブルー・オニオンに次いで有名なデザインとのことです。
ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー(1706-1775)は彫刻家で、アウグスト強王に招かれ、
数多くの作品を手掛けています。


第2章 王の夢、貴族の雅

アウグスト強王は磁器による大型動物の彫刻を作り、大広間に並べて宮廷動物園
「メナージュリ」を作ることを思い立ち、ケンドラーを招いて制作に当たらせます。
どれも実物大の大きさです。

「メナージュリ動物彫刻、ペリカン」
 原型:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー 1732年 製造:1921年

白磁で作ったペリカンが大きな口を開けて魚を呑み込んでいるところです。

「メナージュリ動物彫刻、嗅ぎ煙草入れを持つサル」 
 原型:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー 1732年頃 製造:20世紀後半

鎖につながれた猿が嗅ぎ煙草入れを持ち、つまんだ煙草を見つめています。
豪華な嗅ぎ煙草入れを自慢しあう貴族たちを風刺しているとのことです。

「フィギュリン、猿の楽団」 
 原型:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー、ペーター・ライニッケ 1753-1755年頃
 製造:1956-1979年

マ005

楽士長の指揮で猿の楽団がにぎやかに演奏しています。
右端には歌手もいます。
これも人間社会を風刺した作品とのことです。
フィギュリンとは小さな立像で、初めはテーブル装飾のために作られたとのことです。
このような磁器彫刻は西洋独自のものです。

「スワン・セルヴィス」 
 原型:ヨハン・ヨアヒム・ケンドラー、ヨハン・フリードリッヒ・エベライン
 1738-40年頃

会場の入口にずらりと並んだテーブルセットです。
セルヴィス(サーヴィス)とはテーブルセットのことで、「スワン・セルヴィス」は
ブリュール伯爵のために作られています。
5年以上をかけて2000点以上が作られた、最大規模のセルヴィスとのことで、
優雅なロココ趣味でまとめられています。
白鳥や魚、カタツムリなどをモチーフにしています。
なぜ容器のつまみがカタツムリなのだろうと思ったら、ブリュール(沼地)に
ちなんだデザインとのことです。


第3章 市民階級の台頭と万国博覧会

産業革命以降のブルジョワジーの需要に応じた作品や、当時盛んだった万国博覧会に
出品された作品の展示です。

『クラテル型大壺「勝利の行進」』 原型:エルンスト・アウグスト・ロイテリッツ 
 装飾デザイン:エルンスト・モーリッツ・パッペルマン 1856年 製造:1893年以前

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クラテルとは古代ギリシャで使われたワインと水を混ぜる壷とのことです。
高さ1mはある大きな壷で、染付や金彩で豪華な装飾が施されています。
1893年のシカゴ万国博覧会に出品されていて、マイセンの技術力の高さを誇示して
います。

「神話図壺」 原型:18世紀中頃 製造:1880-1900年頃

パンフレットに使われている作品で、左が「ゼフィロスとアモール」、右が
「プシュケあるいは音楽のアレゴリー」です。
高さ50cmほどで、青色も優しく形も優雅です。

『陶板画「横たわる若い女性」』 原画:フランソワ・ブーシェ 
 原型:19世紀前半 製造:19世紀前半

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ロココ時代の画家、フランソワ・ブーシェの有名な作品を陶板に写しています。
絵付けの色は焼成によって変わりますから、このような微妙な色彩まで再現するのは
とても高度な技術です。


第4章 モダニズムの時代、アール・ヌーヴォー、アール・デコ

19世紀末から20世紀前半にかけての作品です。

「ウィング・パターン・セルヴィス」 
 原型:ユリウス・コンラート・ヘンチェル、
 ヨハネス・ルドルフ・ヘンチェル 1901-1903年 製造:20世紀初頭

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コウモリの翼をあしらったアール・ヌーヴォーの意匠です。
色彩も落着いた、すっきりしたデザインで、一般家庭向けであることが分かります。

「猫を抱く少女」 
 原型:ユリウス・コンラート・ヘンチェル 1905年 製造:1920年

ユリウス・コンラート・ヘンチェルは子供の何気ない仕草を小さなフィギュリンに
しています。
女の子が猫を抱きしめていて、迷惑そうな猫の様子も上手く表しています。

「アフリカ象の大燭台」 原型:マックス・エッサー 1924年 製造:1924年
高さ1m近い大きな燭台です。
マックス・エッサーは動物像の名手ということで、異国趣味ですが、
とても洗練されたデザインです。
この時代は植民地開発により、異国趣味が流行していたそうです。
ドイツはアフリカのナミビア、ルワンダ、カメルーンなどを獲得しています。


第5章 創造の未来へ

第二次世界大戦後の東西分割によりマイセンは東ドイツに属することになります。
そして1990年にドイツは再統一され、現在に至ります。

「オベロン」 
 原型、装飾デザイン:ペーター・シュトラング 1969年 製造:1969年

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オベロンは妖精の王でシェイクスピアの「真夏の夜の夢」にも登場します。
妖精にふさわしい華やかで幻想的な姿です。
社会主義ドイツとは合わない題材なので、外貨獲得のための輸出用でしょうか。

「ファブラ・セルヴィス」 原型:ザビーネ・ワックス、ジルヴィア・クリューデ 
 装飾デザイン:ザビーネ・ワックス 1991年 製造:2000年

ドイツ再統一直後のデザインです。
角形をしたセルヴィスで、取っ手はトカゲの形をしていて、とてもモダンです。


東洋磁器の模倣から始まったマイセン磁器が独自の発展を遂げ、王侯貴族、
ブルジョワ、庶民など時々の需要に応じてさまざまの作品を生み出していった
ことがよく分かります。
その技術力、芸術性の高さには改めて感心します。
また、それぞれの作家の個性も面白く思いました。

展覧会のHPです。


2010年に大倉集古館でも、「開窯300年 マイセン 西洋磁器の誕生」展が
開かれていました。

「開窯300年 マイセン 西洋磁器の誕生」展の記事はこちらです。

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【2011/01/18 07:06】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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