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「薩摩焼 桃山から現代へ 歴代沈壽官展」
三越前
chariot

日本橋三越本店新館ギャラリーで開かれている「薩摩焼 桃山から現代へ 
歴代沈壽官展」に行ってきました。
会期は1月31日(日)までです。

さ001


薩摩焼は豊臣秀吉の文禄・慶長の役で捕虜として連れて来られた朝鮮の
陶工たちによって始められています。
薩摩焼の陶工たちは江戸時代を通じて島津家の保護と統制の元に置かれる
ことになります。
沈壽官窯はその一つで、沈家の十二代から当主は沈壽官を名乗っています。

この薩摩焼の中でも、白い生地で上品な白薩摩を中心にした約100点の展示です。
白薩摩はおもに藩主などの使用のために作られていました。

「白薩摩茶碗 伝火計手」 伝 初代 沈当吉 17世紀初頭
さ002

火計手(ひばかりで)とは、陶土も釉薬も朝鮮から持ってきた物を使い、
焼成する火だけが日本の物という意味です。
ぶっくりとした大振りの茶碗で、素朴な姿をしています。

「金襴手花卉文花瓶 一対」 十二代 沈壽官 1893年
さ003

高さ77.3cmの大きな花瓶で、シカゴ万国博覧会の出品作です。
左側の瓶にはさまざまの花の模様が、右側の瓶には葡萄や瓜、大根などの
果物、野菜が描かれています。
幕末には既に薩摩藩はパリ万国博覧会に幕府とは別に単独で薩摩焼などを
出品しています。
十二代は幕末明治の薩摩焼を欧米への輸出品に育てています。

現在、サントリー美術館で開かれている、「マイセン磁器の300年」展には、
同じシカゴ万博に出品されたマイセン磁器の大壷が展示されています。
どちらもとても大きく、華麗で、その技術力を競い合っています。

「マイセン磁器の300年」展の記事はこちらです。

「錦手ネズミを見つめる母娘像」 十二代 沈壽官 1880-1900年頃
さ005

筆立てでしょうか、小さな像で、大根の上にいるネズミを大きな壷の陰から
ネコと娘と母親が息をひそめて見つめています。
陶磁器の置物の小道具として陶磁器を使うという、面白いアイデアです。
「マイセン磁器の300年」展でも子供がブルーオニオン柄のカップでお茶を
飲んでいる像がありました。

「錦手四君子図蓋透彫角型香炉」 十二代 沈壽官 1880-1900年頃
パンフレットに使われている作品です。
四君子とは蘭、竹、菊、梅のことで、姿の気高さを君子にたとえています。
写真では菊と蘭の面が見えています。
網の部分は七宝つなぎの透かし彫りで、透かし彫りは十二代の考案した
技法とのことです。
その精緻な技術には感心します。

「錦手雛菊流水図宝珠鈕壺」 十二代 沈壽官 1900-1910年頃
さ004

中国風の蓋付きの壷に、能の「菊慈童」を思わせる菊と流水を描いています。

「薩摩盛金七宝繋地雪輪文大花瓶」 十四代 沈壽官 1993年
さ006

高さ50cmの大きな花瓶で、金の部分は純金を使って盛り上げるという
新しい技法を使っているそうです。

十四代沈壽官は司馬遼太郎の小説、「故郷忘じがたく候」の主人公です。
十四代は豪放な人柄で、司馬遼太郎は十四代に薩摩兵児(へこ)の面影を
見ていたようです。

「薩摩六角伏香炉」 十五代 沈壽官 2010年
さ007

高さ28.5cmの全面を透かし彫りにした繊細この上ない作りで、中に炉が入り、
掛け紐まで作ってあります。
これだけの作品は彫るのも焼くのも大変だったろうと思います。

「薩摩獅子乗大香炉」 十五代 沈壽官 2010年
さ008

高さ69cmの大きな香炉で、十二代の時代の下絵図に基いて、今回の展覧会の
ために制作されたそうです。

初代沈当吉時代の素朴な品から始まって、よくここまで発展してきたものだと
思います。
白薩摩の豪華さと技術の冴えを十分堪能出来る展覧会でした。




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【2011/01/22 06:41】 美術館・博物館 | トラックバック(1) | コメント(0) |
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blog_name=【Art & Bell by Tora】 ♥   歴代沈壽官展 @日本橋三越
 
 1598年の秀吉の朝鮮出兵の際に薩摩に連れてこられた朝鮮陶工の400年の物語。その詳細は、会場で行われた15代沈壽官のギャラリー・トークのメモをHPにアップしたので参照していただきたい。とても分かりやすく、説得力のあるレクチャーだった。ものすごい数の聴衆だった
【2011/01/24 16:51】

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